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柔らかな殺意 5 潜入

「寒いね……」 「えぇ……」 コツコツと言う足音が、眼下の闇に吸い込まれていく。 空調でも効いているのだろうか、足下から冷たい風が吹き抜ける。 そして、何段ぐらい降りたのだろう。横幅が狭いことと、段差がきついこと、さらに慎重を期す挙動が、距...
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柔らかな殺意 4 遭遇

“コツ……コツ……コツ……” 1メートルほど下の段差には、真っ黒な排水が流れている。ごぅっ……と言う音とともに、強烈な臭いがたち込める。優人は、コートの裾や、袖口を少し気にしながら、足下をペンライトで照らしつつ、そのコンクリートの『通路』を...
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柔らかな殺意 3 回想

店のさらに地下。階段を下りきったところに、両側に鉄のドアが並ぶ通路がある。そのうちの一室の前で立ち止まり、持っている鍵でドアを開ける。 手探りで入れるスイッチ。素っ気ない蛍光灯が照らす室内。内装は皆無に等しい。打ちっ放しのコンクリートを白く...
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柔らかな殺意 2 『仕事』

優人の勤めるオフィスから、5分ほどしか離れていない飲食街。昼は食事を摂りに来るサラリーマンでごった返し、夜は夜でまた賑わう。 そんな一角の地下に、その喫茶店はあった。 『Cafe U.U.』 階段のそばには、西洋風の木の看板が架かっている。...
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柔らかな殺意 1 合図

キーーン・・コーーン……カー……ン……コー……ン……・ 昼休みを告げる呑気なチャイムの音が、オフィスに響きわたる。 駅からほど近い、昔からのビジネス街。周囲には、小汚い雑居ビル然とした所があると思えば、最近できたらしい、全面ガラス張りの高層...
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柔らかな殺意 0 原風景

あたしがこの世で最初に見た物は、青い空。 まるで、地面から空へ落ちて行くんじゃないかと思うような、そんな空。 暑かったか、寒かったか。解らない。そんな感覚を憶える前だったから。 そして、次の記憶。私をのぞき込む、4つの目。一人は、父さん。 ...
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星空の君 5 降ってきた星空

誰もいない砂浜に、人影が一つ。俺は砂に足を取られつつ、近づいていった。 女の子だ。……ん? この娘……そうだ! 昼間にサトウキビをくれた娘だ! 偶然だな。ちょうどいい。昼間はお礼が言えなかったから、ちゃんと言っておこう。 「こんばんわ」 俺...
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星空の君 4 果ての珊瑚(ウルマ)のその果てで

妙な物を見たせいで、悶々とした眠りに就いて、翌日。 朝こそ、もうろうとしていたが、昼間にはそれも忘れ、俺達は西表での遊びを満喫した。 当初の予定通り、カヌーを漕いでマングローブの林を突っ切って川を上り、そこから山を登って、地上数十メートルの...
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星空の君 3 唐突な光景

「んー……なんか、遠近感が変になりそうだぜ……」 ツマミを取りがてら、俺がむくりと起きあがったときだ。 ほとんど真っ暗な視界に、人影が見えた気がした。 「ん? おい……あそこ、誰かいないか?」 俺は目を凝らし、遠くを指さした。確かに誰かいる...
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星空の君 2 ビールとツマミと星空と

関西国際空港から、石垣島への直行便に乗って約三時間。眼下に、すさまじい蒼色の海が広がる。 「うっひゃぁ……」 二度目とはいえ、やはり美しい。思わず感嘆の声をもらしてしまう。 「なあ、トミーよぉ……」 「あん?」 「この海全部、作り物だったら...
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