その他作品

闇色きゃらばん 2

可もなく不可もない晩飯をかきこみ、どうということのない時間を過ごしていると、もう真夜中だ。おれは、出かける支度をした。 「あら? アユム、どこ行くの?」 「ああ。臨時収入を、な」 「へえ、ワン子のお手柄?」 「当たり、だ」 「ダイ...
その他作品

闇色きゃらばん 1

気持ち良い風の吹く夜だ。 縁日がかもす雑多な匂いも、ここへ来るまでにかなり薄まる。風にこされて漂うモノは、何となく空疎な雰囲気だ。みんな分かってんだな。祭りの後にゃ、何も残らねぇって事をよ。 だが、それがいいんだ、おれは。どうしよう...
その他作品

耳だけ芳ちゃん

――その日も、お芳ちゃんは、ちょっぴり長めのおかっぱ髪を一生懸命振りながら、『いつもの場所』に向かっていました。 時間も、いつも同じ。両親が寝静まった真夜中、こっそり調べて探り出した家の合い鍵を持って、扉をくぐるまではゆっくりと、でも、一...
やみのおり

聞こえる声 6

6. 外からの声  その日の夜。わたしは宿題を済ませるべく、机に向かっていた。 「………」 でも、手に持ったシャーペンは、トントントン……とノートに斑点を増やしていくだけで、解くべき問題は一向に頭に入ってこなかった。 食事は...
やみのおり

聞こえる声 5

5. 『彼女』の声  それからの後始末は、結構大変だった。幸い床はほとんど汚れなかったから、シーツの洗濯だけですんだけれど、夕方に帰ってきた親への言い訳を考えなくてはいけなかったからだ。結局、早引きしたことを説明し「熱冷ましのタオ...
やみのおり

聞こえる声 4

4. 声なき声  結局、泣きながら後始末をして、その後、わたしは本当に寝込んでしまった。何も考えたくなかった。ただ、自分を責めさいなむ声だけが、延々と響いていた。 『自分の中から本当に痛い言葉は出てこない。本当に自分に痛い言葉を...
やみのおり

聞こえる声 3

3.探す声  次の日。わたしは学校を休んで、部屋にこもっていた。 滅多に体調を崩さないわたしだから、母さんはとても心配して、「パートを休んで家にいようか?」と言ってくれた。でもわたしは、「そこまでしてもらわなくていいよ」と断って...
やみのおり

聞こえる声 2

2.機械からの声  そんな『不自然』な一日も、いつのまにか、慌ただしい日常という『自然』に流れてしまう。思い出す暇も無く、まして、自分の中だけのことだから、他人に思い出させてもらうことも無く……わたしがわたしをいぶかしむ声は、ずっ...
やみのおり

聞こえる声 1

1. 張り上げる声 「はーい! それじゃあ、今からホームルームを始めまーす!」 わたしは、教壇の上で大きく声を張り上げた。自分で言うのもどうかと思うけど、教室中に思い切り響く声。そして何より叫んでいるわたしが、とても心地良い。体...
やみのおり

聞こえる声 0

0.果てに呼ぶ声  誰でも 頭の片隅から 声を聞くと思う もう一人の自分……とまではいかなくても 確かに よく 本当の自分からの声 と言う人がいる でも 本当にそうだろうか? 仮に 声に導かれて満たされたとしても その声...
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