不二川 巴人

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非18禁作品

稲穂

……秋の涼しい風が吹いておりました。 暑くもなく、寒くもなく、無造作に羽織った麻混のジャケットを優しく通って身体に香るような、そんな風の吹く平日の昼下がり。私は、バス停にたたずんで、ぼんやりバスを待っておりました。 そのころ私は失業中で、三...
非18禁作品

国技とミカン

世間では、どうやら、私のことを小説家と呼ぶらしい。こんな風に言うのは、当の私自身に、まるで自覚がないからだ。いくつかの偶然が重なり合って、私は今、ショート・ショートの締め切りを、編集者からせっつかれているのだ。しかし、目の前には純白の原稿用...
非18禁作品

雪の降る朝・あとがき、あるいは蛇足。

さて、突発短編『雪の降る朝』、読んで下さって有り難うございます。エッチを期待された方、どうも申し訳ございませんでした。『上級立ちション講座』を書いている最中に、ふと魔が差したと申しましょうか(苦笑)。 それなのに、ホントに珍しく、あとがきを...
非18禁作品

雪の降る朝

男が一人、家の中で作業に没頭していた。 その家は、狭くはなかったが、中は、嵐にでも遭ったかのように散乱していた。 散らかっているものは、機械の部品、設計図、書物など。うず高く、という表現がよく似合い、その上には、うっすらとほこりまで被ってい...
非18禁作品

隣人

その日も同じ一日だった。 中途半端な時間に起きての、朝食兼昼食。一通りの身繕いを終えて、着替え。それが終われば、特にやることがない。いや、やることは山積みのはずだが、どうにもやる気が起きないのだ。何気なく端末の電源を入れ、ネットワークを覗い...
非18禁作品

常連の会話

自由な時間のあるときはお金がなくて、定収入ができると暇のなくなるのが世の常。かくいう僕も、例外ではない。おかげで、楽しみの一つが減ってしまった。喫茶店通いだ。最寄り駅の大通りを一つ横にそれたところに、その店はある。だがしかし、別にその店が特...
非18禁作品

茶店(サテン)語辞典~立ちション講座・番外編

「はぁー……」 何度目かのため息をつきながら、俺は会社からの帰り道を歩いていた。肩は上空の空気を体積分全て背負い込んだように重く、それを支えきれない足は、鉛のようだった。 「ふぅー……」 何度ため息を付いても、体の中の澱んだ空気は一向に出て...
光かがやく天使のしずく

釣りキチ日誌~立ちション講座特別編・秋期臨海学習 4 甘いおしおきで、おしまい

結局、何も起きなかった。車内に甘い呻き声が響くことも 、大洪水が突如として出現することも。車が自分の家の前に停まった時、俺は心の底から神に感謝した。 「さて、荷物を降ろしますか」 諏訪さんはリア・ハッチのロックを解除し、車から降りて荷物を降...
光かがやく天使のしずく

釣りキチ日誌~立ちション講座特別編・秋期臨海学習 3 車の中で、こそこそこそ

帰りの車は高速道路をスムーズに走っていく。往きと違ってそこそこの交通量が有るので、法定速度内でのクルージングである。結局あの後、俺たち三人は島からの高速船を降りた港町の食堂兼土産物屋でうどんと焼きハマグリの昼飯を食い、会社の同僚へ干魚の詰め...
光かがやく天使のしずく

釣りキチ日誌~立ちション講座特別編・秋期臨海学習 2 ゆーき、失敗する。そして?

昼ちょっと前までに、俺とゆーきは各一匹ずつ釣果を追加した。一匹目と同じく、俺はメバル、ゆーきはアイナメだった。諏訪さんはというと、カレイとキスを一匹ずつ。両方とも砂地の海底に住む代表的な魚だということらしい。この釣果が多いのか少ないのか、ビ...
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