不二川 巴人

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光かがやく天使のしずく

We Wish…… 2 12月5日 日曜日 風景2

「ねえ、マー君。コート、臭くない?」 ひるがえるトレンチコートのすそが風を切り、巻き上がったそれが、少女の鼻にかすかな異臭を運ぶ。 「……そうですか? どれ……確かに、臭いますね。ごめんなさい、しーちゃん」 その指摘に、コートを羽織っていた...
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We Wish…… 1 12月5日 日曜日

「おわぁぁぁーーーーっ?!」 ごうごうとうなりを上げて、俺の頬に無慈悲なビンタをくれる風。その透明な剛腕は、俺の耳を見つけるや、そこからにゅるりと忍び込み、目玉だか三半規管だか脳味噌だかを、とにかくしっちゃかめっちゃかにかき回してくれる。 ...
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Happy^2 Birthday My (S)We(e)t Angel! 6 これからの時間

「ただいま」 「あ、お帰りなさーい」 ゆーきは、二人分の布団を敷き、その上にちょこん、と座って俺を待っていた。 パンパンに張りつめた風船から空気が抜けるように、俺の緊張感が抜けていく。そこへ聞こえる、ゆーきの声。 「遅かったね、潤一さん。な...
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Happy^2 Birthday My (S)We(e)t Angel! 5 すれ違った時間

駅まで歩く五分ほどの間、俺は自分が早足になっていることに気付いた。なぜだかはっきり分からないが、何かある、そんな思いがあった。 「おっす」 「………………あ、こんばんは、友部君。ごめんね、こんな遅くに……」 改札から少し離れた薄闇の中に、彼...
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Happy^2 Birthday My (S)We(e)t Angel! 4 濁った時間

「はあ……」 ゆーきの奴にプレゼントを買うのに、思いがけない道を通ることになったもんだ。この複雑な気分を紛らわせるには……そうだ、あそこへ行こう。 俺の足は、いつもの喫茶店へと向かっていた。 「いらっしゃい……やあ、友部君じゃないか。久しぶ...
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Happy^2 Birthday My (S)We(e)t Angel! 3 過ぎていった時間

「さぁて……」 電車に揺られることしばらく、俺がやってきたのは、駅前のデパート。時々、ゆーきとも一緒に来るところだ。土曜日の昼時というのは、いつも異様な熱気がある。まあ、俺だって、子供の頃は楽しみだったけどな。珍しいいろんな商品と、何より、...
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Happy^2 Birthday My (S)We(e)t Angel! 2 過ごしてきた時間

「……ぅ……」 紙の挟めるぐらいに細く、まぶたが持ちあがる。さしてかわりばえのしない天井と、蛍光灯が、ぼんやりと見える。別に、毎日の変化を部屋の内装に求めたりはしないが。 「…………」 頭が重い。起きなければ、と言う意識が、なかなか全身に伝...
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Happy^2 Birthday My (S)We(e)t Angel! 1 いつもの時間

程良く残業をしてから家に帰り、あいつの作ってくれる夕食を、笑いながら平らげて、満足のため息一つに、投げ出す身体。流しからは、リズミカルに食器を洗う音と、あいつの鼻歌。なんということはない、いつもの時間。眠るまでの数時間、和やかな時間。 「は...
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上級立ちション講座6 二人で後始末

「おーい、ゆーきぃ……」 「あー……」 「ゆーきくーん……?」 「ふあぁ……ん……」 「こら」 「ふぁっ?!」 ほっぺたをペチペチと叩いて、ゆーきはようやく我に返ったようだ。 「帰り支度、しないとな」 「あっ……そ……そっか……。ごっ……ご...
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上級立ちション講座5 二人で……

「とっ……とっ……とっとっと……」 「下りは、登りよりも危ないんだぞ。慌てるなよ」 「ととっ……そ……そうだね、気を付けて……」 軽やかに道を下るゆーきだったが、勢いの着いた足は、言うまでもなく滑りやすい。何度かバランスを崩しそうになって、...
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