ぶわっ 6 何処とも知れぬ風景

SF(少し・不条理)
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「あらボーヤ、さっきも会ったわよね。どう? アタシの体、しっかり見てくれた?」
つややかな、たっぷりの黒髪、頭身の高い背丈。それを包む、薄紫のコート。襟から上、顔の、突き抜けそうなほど透き通る白い肌。黒目がちの大きな瞳。流れるような、垂れ気味の目元。小さいけど、しっかり筋が通った鼻。深紅の口紅に、妖しく濡れ光る唇。間違いない!
言いたいことが沢山ありすぎて、口をぱくぱくさせている僕にはまるで構わず、彼女は、ゆったりと言った。
「丁度良いわ。今から、しない? なんだったら、そこのおトイレでもいいわよ? 楽しみましょ…」
ゆったりとコートの前をはだけ、あの時と同じ、見事な裸身をさらしながら、ねっとりと言う彼女。またぞろ、自分の中で哀しいぐらいに本能的に膨れ上がる劣情を、僕は必死で押さえ、たくさんの質問から、一番大事なことを訊いた。
「ここから出る方法を教えてくれ!」
しかし彼女は、それが聞こえないかのように、僕の手を取り、コートの中、再び湿った茂みの中へ導こうとする。
「変なことを言うボーヤねぇ…いいじゃない…楽しみましょ…」
僕はその手を無理矢理ふりほどいて怒鳴った。
「やめろ! もういいよ! それより、僕をこの世界に引きずり込んだのは、あんただ! だったら、僕をここから出す方法も知ってるだろう?! それを教えてくれ!」「…………ここから出せ、ですって………?」

瞬間、彼女の顔が変わった。
その顔の微笑みは、不自然なまでに強調され、それまでの『妖艶』な雰囲気の、『妖』の部分が強くなる。まとう空気も、喰らい尽くすようなそれに変わる。恐ろしい…! 僕の体から、血の気が引いた。じりり…と後ずさりかけた僕の耳に、『彼女』は言った。

「逃がさないわよ…だって、久しぶりの『餌』ですもの………」
「え…餌……?!」
「みなさぁーん!!」
『彼女』が周囲に何かを呼びかけたかと思うと、それまでチラチラと僕を見ているだけだった群衆が、一斉に僕に向かってきた。
サラリーマン風も、おとなしそうな女性も、初老の男性も、熟年夫婦も、老婦人も…みんな、僕に向かってにじり寄ってくる。しかも全員、作り物のような、満面の笑みを浮かべて。
その場から逃げよう! そう思った僕の意識は、見事なまでに空回りした。僕は腰が抜けて、その場にへたりこんでしまったのだった。
どわっ! …と人垣が押し寄せ、僕の意識は、ブラック・アウトしていった…。



「ん…うーん…」
うっすらと視界が戻ってくる。…闇? いや、どこか薄暗い部屋の中のようだ。そこかしこにあった『公衆便所』じゃないみたいだな。あそこは、もっと明るかったからな…。
やけに冷静に分析した後、初めて、体の自由が利かないことが解った。大きなベッドのような台に、大の字に手足をくくりつけられ、それぞれの手首と足首に、なんだか、熱くて柔らかい、枷のような物をはめられているようだった。この感覚…なんだろう? 試しに、くっ…と、右手に力を込めてみる。すると、
(くちゃり…)
「あぁんっ!」
湿った、粘ついた音と共に、甘い呻き声が聞こえた。まさか…そう思って、今度は左手を動かしてみた。
(ちゅぴっ…)
「んひっ!」
左側から聞こえる、別の呻き声。自分の手が、じっとりとした粘液に濡れているのが判る。まさか、足も…? ぐいっ…と、左右それぞれを持ち上げるように意識してみる。
「ふあ!」
「いぃんっ!」
ぷるぷるとしたヒダの感触は、足の指でもよく解る。特に右足と左指は…そのヒダに指がすっぽり包み込まれている感覚が、はっきり、する。と、言うことは…

僕は、今自分の置かれている事態の、あまりの異常さに、頭を巡らせるのを一瞬ためらった。だが、確認はしなければならない。そして、僕が認識した、自分の姿は…

全裸でベッドに横たわり、大の字に広げられた手足それぞれに、四人の女性が座り、さながら『肉の枷』になって体を拘束している…と言うものだった。

「はは…あはは…」
デタラメだ。あまりにもデタラメだ。理解できるできないの問題じゃない。
「ふはははは…うふふはっ…」
知らず知らずのうちに笑いながら、僕は、自分の中の何かが、音を立てて崩れて行くのを感じていた。そして…
「あはははははははっ!! 面白い! 面白いじゃないか! そぉら!」
完全に吹っ『切れた』僕は、肉の枷に埋まった合計二十本の指を、思い切りうごめかした。

(にちゃぐちゃぴちぬちちゅぴぐちちゅぼぷちゅむにゅぐに…)
『やんっ! あぁっ! くふゅっ! んおぁっ!! くぴっ! んいっ!…』
「そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそら!」
(ちゅくぐちゅぬちぺちょちゅむちゅぽくちゃぴちつぷべちゃ…)
『あうっ! ふむっ! んいっ! くぱっ! はうっ! きあぁぅっ!…』
「はははははははははははははははははははははははははは!」
(じゅぶくちゃびちぬぱぺちょぐぼずぶちゅちゃちゅちゃちゃ…)
『あぁあぁぁああぁああぁああぁぁぁぁあああああああああっ!!!!』

ステレオ顔負けの、四方向からのサラウンドで、粘液音と、甘い悲鳴が聞こえる。ただ、普通のステレオと違うところは、音を奏でる部分それぞれに、熱い感覚があることと、むわり…とした、生臭いほどに濃厚な、蜜の臭いが漂っていることだった。

「あははははははっ! そらそらそらそらぁ!」
「…あら、もう随分お楽しみみたいね…」
そんな嬌声四重大合唱の中、ふと、ゆったりとした声が薄暗い部屋に響いた。あぁ、あの女性だ。既にコートは脱ぎ、再び見事な裸身を僕の視界にさらしている。僕は幾分…いや、かなり…下品になってしまった思考で、彼女を見上げて口走った。
「ははは! 凄く楽しいね、これ。お姉さんも、混ざってくれるの?」
へらへらと訊ねる僕に、彼女は満面の、妖艶な笑みで返した。
「ええ。今からたっ…ぷり、ね」
「うわっ!?」
言うが早いか、彼女は、体を反転させて僕に覆い被さり、既にガチガチになっている僕のアレにむしゃぶりついた。…当たり前だが、手足四カ所で女性のアソコを感じ、たっぷりの粘液を感じ、蜜の臭いを嗅ぎ、甘ったるい呻き声を聞いていれば…下半身は問答無用だ。すぐに、じゅるじゅるというツバの音と、じんわりと痺れるような感覚が襲ってくる。
「う…うぷっ…むっ…ずずっ!!」
「んもぉっ?!」
負けじと僕も、自分の顔に乗っている、ふくよかすぎるお尻の中、トロトロと蜜を滴らせている花びらにむさぼりつく。むうっ…とした、鼻を突くほどの濃厚な臭いがする。手が動かないから、歯を剥き、舌を突き出し、鼻やその他、顔面の起伏をフルに使って、顔全体で彼女のそこをこすった。
(ずりゅ ぐちゅ じゅぷ…)
「うっ…んむっ…くほっ…」
顔中を蜜まみれにして攻める僕に対抗して、喉まで僕のナニを飲み込もうとする彼女。戦況はしばらく拮抗していたが、やがて…
「あぐぁっ!」
…と、彼女の口の中、果てたのは僕の方だった。「んぐっ…ごくっ…」僕の物を飲み干す声がする。しかし、今の僕は、それぐらいで満足はしない。すぐに再充填は完了する。精液を飲み終えた彼女が、再び僕の物をほおばろうとした時…
(はむっ)
「きひいっ!?」
僕は、目の前でめくれ上がっている花びらを一枚、くわえて引っ張ってみた。くわえたまま、少し、左右に顔を振る。くい…くい…とそれは伸び、そのたびに、
「くあぁぁっ! いやぁ…だめよぉ…」
切なそうな声が聞こえる。ならば…と、僕は、そこを重点的に攻めることにした。花びらをくわえ、時に引っ張り、時に少し噛み、舌でもてあそび、めくった裏側も嘗め…
「んっ! んんっ!! んいぁっ! いいっ! それイイ! ダメ…あ…いきそ…イきそうよ…ああああっ!」
僕の上のお尻がガタガタと震え、懇願するような声になっていく。更に僕が、上下の唇で、大きく膨れ上がっている突起をきつめに挟んだときだ。
「ひあっ!!! うふ…あ…い…で…出ちゃう、オシッコ、オシッコ出ちゃうのぉぉーーーっ!!」
一際大きな声がしたかと思うと、じゅわっ! と、僕の視界が滲んだ。
(じゅばばばばばば…)
「ぶっ! うぶぁっ! ごぼっ…!」
熱い、そしてちょっとしょっぱい物が、容赦なく僕の口から入り、喉を襲う。紛れもないおしっこなんだが…不思議と、その時の僕はその味を不快に思わなくなっていた。それどころか、しまいには彼女のあそこにより一層顔を埋め、そこから直におしっこを飲み干していた。
ごく…ごくり…喉を滑り落ちていく、熱い感覚。喉を鳴らすたびに、不思議と、僕のナニにますます力がこもっていくのが判った。絶好調という奴だった。

「はぁ…はぁ…アナタ…凄いわね…とっても上手…うふふ…」
しばらく、おしっこを出し尽くしてぐったりしていた彼女は、僕の方を向いて体を重ね直し、僕に囁いた。
「ふふふ…面白い…面白いなぁ! あははははははは!!」
「うふふ…」
オシッコまみれの顔で、僕はバカみたいに笑い、手足の指を再びきつくうごめかした。もう一度聞こえてきた嬌声の四重奏が更におかしくて、僕は更に大声で笑った。
「じゃ…メインディッシュ、行くわよ…」
「はははははは! いくらでも来い! あはははは!」
彼女は重ねた体を少しずらし、そそり立つ僕のナニに、一気に腰を下ろした。くちゃり…という微かな音の後は、一気に呑み込まれていく。
「うああっ!」
たまらず、僕の体が弓なりに反る。あまりの快感に手足がこわばり、結果として、『肉の枷』に爪を立てる事になってしまい、両脇から「ぎひっ!!」という、苦痛とも快楽ともつかない声が聞こえた。
「はぁあっ…んっ…すご…くふうっ…イイわ…アナタ、凄くイイ…うふふ…」
彼女は、ゆさゆさと僕の上で跳ねる。自分のその豊かな胸を、両手でもてあそび、時に自分で吸いながら。
「うわっ! うわっ! ぐっ…ふああっ!!」
一方の僕は、腰をガクガクと跳ね上げながら、怒濤のような快楽に揉まれていた。僕のナニと、彼女のヒダがこすれあうのがあまりにも良すぎて、それから逃れる為に、少しでもこすれる回数を減らそうと、自分の腰の動きを彼女の動きに連動させようとする。しかしそれが結果として、更なる摩擦を生み、余計に気持ちよくなって…という、その繰り返しだった。腰が跳ねるたびに手足にも力がこもり、四方から呻き声が聞こえる。
男声一と、女声五の、嬌声の一大アンサンブルが、何処とも知れない、薄暗い部屋に響きわたった。

「くあっ!」
程なく、僕は自分の精を彼女の中へ解き放った。これで二回目。さすがにもうこれでこの快感の荒波から解放されるだろう。さぁ、どっと押し寄せてくる虚脱感…を待っていた僕は愕然とした。待ち望んでいたそれが、不思議と全くなかったからだ。再び僕のナニは、さっきまでの射精などなかったかのようにその堅さを保持し、彼女の中で暴れ回る。どうして…? その疑問が浮かぶよりも、僕はそんな自分のナニが面白くて、次の瞬間、
「ははっ…凄い、凄いぞぉ! ははははは!!」
やっぱり、大声で笑っていたのだった。



「ふうっ!!」
「まだよぉ…もっと、もっと出すのよぉ…んんんっ! うふっ…ひあっ…」
何回目の射精だろう? 数え切れないぐらいに、そして毎回変わらず大量の精液を彼女の中に出しているにもかかわらず、彼女のアソコから僕のそれがあふれ出すことはなく、彼女はますます、そのふくよかな腰を振り続ける。僕にはもう、バカ笑いする力も、考える力もなくなっていた。ただ、別物のようにはね回る自分の腰と、作り物のように堅さに衰えを見せない自分の性器、そして周囲から聞こえてくる、五種類のトーンの嬌声と、ぐちゃぐちゃという粘液音を、ただ、ぼんやりと感じていた。
(どくん!)
あ…また僕、射精したみたいだ。完全に快感だけが、一人歩きしている。
(どぷっ!)
…あ、また…
「あ、れ…?」
目が、かすんでくる。
耳も、きーん…という高い音だけが聞こえてきた。
力が、どんどん抜けていく…。
荒かった息が、寝息のように穏やかになっていって…
あぁ…眠い…眠いなぁ…
このまま、ずっと眠るのかなぁ…

ぷつん…

僕の意識はそのまま、真っ白になっていった…。

つづく

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