「とっ……とっ……とっとっと……」
「下りは、登りよりも危ないんだぞ。慌てるなよ」
「ととっ……そ……そうだね、気を付けて……」
軽やかに道を下るゆーきだったが、勢いの着いた足は、言うまでもなく滑りやすい。何度かバランスを崩しそうになって、やっと俺の言葉が聞こえたようだ。
「あ……はっ……!」
「どうした? どっかひねったか?」
「んっ……ううん……なんでもないよ……。ちょっと、きっ……急に、怖くなって来ちゃって……てへへっ…………」
「肩、貸してやろうか?」
「ん……そうする……」
俺の腕に、身体全体でしがみつくゆーき。腕から、細かな震えが感じられるのは、気のせいではない。
「はぁっ……はぁっ……あっ……は…………」
すぐそばから、荒い息が聞こえてくる。平静を装おうとしていても、どうしても漏れてしまう……そんな息遣いだった。
「…………」
ゆーきの視線は、遙か下へ続く下山路と、しがみついている俺の腕……特に、自分の股間に当たっている手の甲の辺りを、せわしなげに見ている。
「ぅん……んっ……あっ……はぁっ……ぅっ……うふっ…………」
さらに、その手は、俺の手をどこかへ導こうとしてはやめ、また思い直しては、やはりためらい……と、実に落ち着きがない。
「(来た、か……)」
俺は、黙々と歩を進めながら、偶然を装い、手の甲で、ゆーきの股間を、ぽんぽん……とごく軽く撫でた。
「あんっ……!」
こらえきれない、と言った風の、甘い声。そして、ゆーきが俺の腕をぐい、と引っ張った。
「……何だ? ゆーき」
あえて何事もない風に答える俺を、潤みかけた二つの瞳が見上げる。
「じゅんいち……さん……ゴメン……。ボク……ちょっと…………」
「ひょっとして、トイレに行きたいのか?」
「……う、うん……。まだ、だいぶかかるよね? 駅まで……」
「そうだな。下りだしてから、そんなに経ってないしな」
「やっぱり、そっ……そう……だよね……」
「…………?」
冷や汗の滲んだ、引きつった笑いの中に、安心感がかいま見えたのは……俺の勘違いか?
「ねえ……じゅんいち……さん……。ここで……しちゃって……いい?」
「仕方ないな。脇の林に行こうか。出来るだけ、見えないところの方が良い」
「ん……」
俺は、ゆーきをゆっくりと脇の林へと誘導していった。
……その間、確かに、俺の手は、ほんのりと熱いゆーきの股間へと導かれていた……。
びっしりと敷き詰められた小枝のじゅうたんを踏みしめ、道をそれることしばらく……。
「この辺りでいいだろう。道からは見えないはずだ」
「はぁっ……あっ……あんっ……んっ……ふぅぅっ…………」
「おい、ゆーき」
「あっ……はんっ……えっ?! あっ、そ、そうだね。じゃあ……」
俺の手を使って、一人で始めているらしいゆーきを、こっち側へ呼び戻す。
見張りの俺の方をチラリと見てから、フラフラと前へ進み、もたつく手で、ズボンとショーツを脱ぐゆーき。丸く、白いその尻が、秋の茶色い風景の中、一際まぶしく俺の目に映った。
「んっ……んあぁっ……!」
片方だけ足を抜き、腰を前に突きだし、自分で花びらを拡げて……定番の立ちションスタイルが出来上がり、いよいよ……というところで、異変が起こった。
「うあっ……! はっ……あぁ……んっ!!」
尿道の戒めを解くために、割れ目の中を触っていたゆーきが、突如、その場にうずくまってしまった。
「おっ……おい?! ゆーき?!」
しばらくそのまま動かなかったゆーきだったが、やがて、のろのろと立ち上がり、ふうっ……っと、こちらの方を向いた。
「一体どうしたって……」
「ぐすっ……うっ……ひっく……うぅっ……」
ゆーきは……顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
「おい……」
「ぐすっ……ごめん……ごめんね、じゅんいぢざぁん……ボク……ボグゥ……うっ……うえっ……」
半裸のまま、フラフラとこちらへ歩み寄ってくるゆーき。下半身に力が入らないのか、極端ながに股で歩くその姿は、奇妙なまでに、いやらしい姿だった。
「うっ……うぐっ……えっ……あんっ!」
「危ないっ!」
ゆーきがつまづいてよろめくのと、駆け寄った俺が、その身体を抱きとめるのとは、幸い、同時だった。
「はっ…………あはぁあっ……!」
俺の胸に顔を埋めたゆーきが、決定的なまでに甘い声を吐く。
「んっ……んふっ……うっ……ふうぅっ……んっ……あんっ……!」
そして、俺の足からは、焼けるような熱さと、はっきりと粘ついた音が感じられる。
ゆーきの中で、『おしっこ』と、『性的興奮』は、とても強く結びついている。立ちションを含む行為そのものもそうだが、『我慢する』ことも、また同じぐらいに、ゆーきには興奮の要因たりえるのだ。
実は今回、あれこれ伏線を張ったのは、他ならぬ俺なんだが……。
「はぁっ……はぁふっ……! んっ……! うんっ……! んっ……! ごめん……ごめんね……ホントに……ホントにぃぃ……」
俺の胸に顔をめいっぱい押しつけ、謝りながらあえぐゆーき。その股間は、口が言う言葉など全く関係ないほどに激しく、俺の足に絡みついている。
……もう、何も言うことはない。
「ゆーき……」
「はっ……んっ……んぅっ……じゅ……ん……うむっ……!」
俺は、顔を上げさせたその唇を、自分のそれで思い切りふさいだ。こぼれる涙も、あふれるよだれも、すする鼻も、にじむ汗も……全部きれいになめとってやった。怖がることはない。全部俺に任せろ、ということを伝えるために。
「木に、手を着いて、後ろを向くんだ……」
「ん……」
言うとおりの姿勢をとるゆーき。小さな尻が、興奮と緊張に震えている。俺は、後ろにかがみ込んで、その奥へと目をやった。
……痛々しいほどに充血し、めくれ上がる花びらと、白く濁った蜜をあふれさせる花芯。性器全体が、よく熟れて破裂した、アケビの実を思わせた。
(じゅるっ……)
「はぁぁんっ!」
尻の肉をかきわけ、その実にむしゃぶりついてみる。本当のアケビは、トロリと甘いが、ゆーきのそれは、幾分しょっぱく、濃厚な味がする。……幾度となく味わっているはずだが、いつにも増して美味い。
「ふっ……! うあっ! あっ! あはっ……! あぁんっ……!」
舌で、果実の中身を存分にねぶる。熱い蜜は絶えることなく、いくらでも俺の喉へ流れ込んでくる。
「うぁあっ……!」
実の上、小さくすぼまる花へも、舌を這わせる。動いた後で、汗の匂いがきついが、それもまた良い。舌先を沈め、空いた手で、性器を責める。
「んあっ……! あっ! あはっ! はっ! んぅうぅ…………っ!」
激しい快感に、ガクガクと震えるゆーきの膝。姿勢が、おぼつかなくなってきたみたいだ。俺は、責める動きをいったん止め、ゆーきに覆いかぶさって囁いた。
「俺がいいって言うまで、イッちゃダメだぞ、ゆーき……」
「はっ……は……あぁっ……そっ……そんなぁ……」
「あんまり声を出しちゃ、誰かに聞こえるかも知れないだろ……?」
「うっ……うぅっ……」
ゆーきの目が、不安に震える。恐らく、登りで出会った他の登山客のことでも思い出してるんだろう。だが、こんな時間だ。登ってくる人間もいないだろうし、下りるとき、山頂には俺達しかいなかった。だから、見られる確率は限りなく少ないんだが……。
「恥ずかしい……ボク、すごく恥ずかしいよぉ……でも……でもぉ……! うっ……うぐっ……うえっ……あうぅ……っ……」
うつむいて、再びぽろぽろと涙をこぼすゆーき。恥ずかしさと、いったん高ぶってしまった身体との狭間で、どうしていいか分からない……そんな涙だった。
「うっ……うんっ……んっ……! はあぁんっ!」
俺はその股間に改めて手を伸ばし、熱い割れ目をこねた。
「んくっ……うぅんっ! そっ……そこ…………あぁんっ……!」
服の上から、胸を揉んでみる。ブラ、アンダーシャツ、ネルシャツと、三枚重ねていても、ツンと勃った小さな乳首がよく分かるから不思議だ。クルクルと指で転がしてみる。
「あぁんっ! んっ……んぅっ……うっ……んぐぅっ……」
首から上を、とろけるほどに赤くしながら、木の幹に爪を立て、震えるゆーき。恥ずかしさに、必死に耐えているようだ。
思えば、初めて会った頃に比べて、変わったよな、コイツ……。もちろん、ちゃんとした『人』としての、良い方向に。俺は、なんて……。
喜びと嬉しさと愛おしさと……全てが俺の股間に渦を巻き、そこにある物を、これ以上なく張りつめさせる。ジッパーを降ろし、ゆーきの腰を持つ。
「いくぜ……」
「はふっ……んっ……うん……んっ! んぅうぅ…………っ!!」
「はぁあっ……!」
思わず、俺も声を上げてしまう。収まった肉棒から、全身がとろけて、ゆーきの中へ入っていくような錯覚だった。
「はふっ……うっ……うふっ……んっ……うぅっ……くふぅぅん……!」
ピッタリと互いの尻と下腹部を密着させ、じっくりこすりつけあいながら、痺れるような熱さを味わう。中に収めているだけで、ゆーきのヒダは、きゅっ……きゅっ……と俺を締め付けてくる。
「あうっ……!」
つなぎ目に手をやってみると、勃起して皮のめくれたクリトリスが感じられる。指先だけで感じるその突起は、なおのこといやらしかった。
「はんっ! だっ……ダメだよぉ……そっ……そこぉ……そんなしたら……あっ! あぁんっ……!」
「したら?」
「いっ……イッちゃう……イッちゃうから……だめ……うっ! んぐっ……ん……!」
どうやら、俺の言ったことを、律儀に守っているようだ。可愛い奴……。
「よし、動くぞ……」
「ゆ……ゆっくり……ね……。くっ……! うはっ……あっ! あぶ……っ?!」
大きくあえごうとしたゆーきの口に、指をねじ込む。
「んぐっ……うむっ……?!」
「あんまり大きな声を出しちゃ、誰かに聞こえるかも知れないって言っただろ……?」
「んっ……うん……ふ……んふぅぅん……!」
(くちゅっ……ずちゅっ……ちゅくっ……にちゅっ……)
ゆっくりと腰を動かしながら、口の中の指をうごめかし、ゆーきの頬、歯ぐき、舌までを、くまなく愛撫する。しゃぶられる自分の指も、じわじわとした快感だ。
「うぐっ……んっ……うぶっ……くっ……くぷぅっ……!」
上と下、両方の口からダラダラとヨダレをあふれさせ、体を弓ならせるゆーき。俺も、じっくり動こうと頭で思っていても、快感につい早く動こうとしてしまう。
(じゅくっ! ずぶっ! ぐちゅっ! びちゅっ!)
「ひっ……!? やぅっ……! あっ! あむっ……うぅんっ……!!」
ゆーきは、大きくかぶりを振って、快感を堪えようとしているようだった。
「…………」
俺は、腰の動きを止めた。
「はぁっ……はぁぁっ……あっ…………あうっ……」
ずるり……と、ゆーきの中から屹立したままの自分の物を引き抜く。
「そ……そんなぁぁ……?! な……なんでぇ……」
熱くうつろな目に、ヨダレまみれの口を、ぱくぱくとさせるゆーき。
「ゆーき……」
俺は、その身体を正面に向かせ、思い切り抱きしめた。
「えっ……あ……む…………んっ…………」
もう一度、思い切りのキスをする。
「ふむっ…………んっ……んぐっ…………うぅんっ…………!」
木にもたれかかり、対面立位のまま、もう一度挿入する。
「ゆーき……変なことを言って悪かった……。俺が、思いっきり気持ちよくしてやるよ。思いっきり、イッてくれ……。俺は、ゆーきの思いっきりイク所が見たい……」
「潤一さん……」
「ああ……」
ゆーきの方から重ねてくる唇を吸い返しながら、俺は、片手をゆーきの尻に伸ばして肛門をほぐし、もう片方をシャツの中に滑り込ませて、直接胸を愛撫しにかかった。
「んっ! んあぁあぁっ! はっ……あはっ……! んっ! あぁんっ!」
「くっ……んおっ…………!」
俺の上で、存分に腰を使うゆーき。時折、俺に倒れ込み、俺の唇と言わず首筋と言わず……無心に嘗めてくる。俺も、負けじとゆーきの耳を嘗め、肛門に沈める指を深くし、抱き寄せる腕に力を込め……いつしか、見られる、聞こえるうんぬんは完全に意識から吹き飛び、互いに身体をむさぼりあう空間だけが、そこにあった。
「はっ……はぁぁっ……んっ……じゅんいちさぁん……きもちいい……ボク……すごく……すごくぅうぅんっ……! おしりも、おっぱいも、アソコもぉ……!」
「ゆーきぃぃ……」
「うん……」
何回目かのディープキス。ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅという、だ液と、汗と、愛液のこね回る音だけが、林の中にこだまする。
「はぁっ……はっ……あっ! あぁんっ……んっ……もっ……もう……ボク……だっ……だめ……!! じゅんいちさぁん……イこう……いっしょに……いっしょにぃぃ……!」
「ああ……思いっきり……思いっきりな……!」
「あうぅんっ!!」
指を一本全部、ゆーきの肛門の中に沈める。クネクネと動かすと、ゆーきの中の締まりが、最高潮になる。
「ひっ……! いっ! いいっ! あっ!! いくっ!! いっちゃうっ! あんっ! 出る! おしっこ! あっ! あはぁあぁぁーー……っ!」
「んっ!!」
(ぴゅるっ……じゅっ…………じゅばばばばぁぁ…………しゃばしゃばしゃ…………)
(どくっ! どくんっ! ぴゅっ…………ぴゅぐっ…………)
つなぎ目から、この上なく熱い奔流がほとばしるのと、俺が、ゆーきの中に精をそそぎ込むのとは、ほとんど同時だった。
(しゅしゅしゅしゅしゅ…………)
だが、ずっと堪えていたゆーきのオシッコの方が、勢いはずっと強い。俺が全て出し尽くした後も、俺の下半身を濡らし続けた。
「はぁっ……あっ……! あはっ…………すご…………あっ…………あんっ…………ん…………」
あまりの量に、当のゆーき自身、ちょっと驚いているようだ。ぽかぁん……と緩みきった笑顔で、俺を見つめている。
「んっ! うぅん……! あっ! あうっ……!」
絶頂の余韻が来たのだろう、ピクピクと腰を震わせながら、ゆーきは、しばらく俺から離れなかった。
俺は、ゆーきの気が済むまで、つながったまま、その身体をずっと抱きしめていた。