耳だけ芳ちゃん

――その日も、お芳ちゃんは、ちょっぴり長めのおかっぱ髪を一生懸命振りながら、『いつもの場所』に向かっていました。
時間も、いつも同じ。両親が寝静まった真夜中、こっそり調べて探り出した家の合い鍵を持って、扉をくぐるまではゆっくりと、でも、一度闇に飛び出せば、その足は一目散に、『いつもの場所』へと向かっていました。
向かう先は、村はずれの古寺です。そこにいる和尚さんに会うことが、お芳ちゃんの最近の楽しみなのでした。
彼女のおじいさん、おばあさんは、ずいぶん早くに亡くなっています。ですので、お芳ちゃんは、友達のおじいちゃんがすごく優しいなんて話を聞くと、ものすごくうらやましくて、仕方ありませんでした。
「毎日お参りしていれば、生き返ってくれないかなあ?」
大人からすればぞっとする「もしも」も、無邪気な――実は、幼い、というにはちょっと無理が出てきたかな、というぐらいの年なのですが――女の子には、特に不思議なことではありません。でも、どこにお墓があるのか忘れてしまったお芳ちゃんは、村の中をでたらめにうろうろしているうちに……その、古寺を見つけたのでした。

「和尚さん!」
「――おお、おお……。今晩も、よく来てくれたね、芳ちゃん」
息せき切ってたどり着いた古寺では、いつものように、しわくちゃの……でも、ものすごく穏やかな物腰の和尚さんが、彼女のことを待っていました。そこで、お芳ちゃんのために特別にこしらえてくれたという、とっても甘い、不思議なおもゆを飲みながら、二人は、いろんなお話をするのでした。友達のこと、両親のこと、自分のこと……いっぱい話を聞いてくれて、たくさん自分のことをほめてくれる和尚さんが、お芳ちゃんは大好きでした。

「それでね、おかあさんってばね…………」
「うん、うん……」
「……あ……えっと……」
調子よく話していて、お芳ちゃんは、ちょっぴり悔しくなりました。おいしいおもゆをたくさん飲むせいか、和尚さんと話しているときは、ものすごくおしっこが近くなるのです。
「おやおや、芳ちゃん、お手洗いかい? いいよ、行っておいで」
「ご、ごめんね……」
もじもじする自分に怒ることはちっともせず、和尚さんは、いつも通り、穏やかにうなずきます。お芳ちゃんは、その笑顔を嬉しく思いながら、少しでも時間を無駄にするまいと、急いで庭の方に出るのでした。

お手洗い、と言っても、こんな古寺です。特にそれ専用の場所があるわけではありません。それに、仮にあったとしても、夜中に一人で狭いところに入る勇気は、お芳ちゃんにはありません。だからいつも、庭の片隅、茂みの陰にしゃがみ込んで、こっそり、用を足すのでした。
「漏れちゃう……漏れちゃうぅ……」
でも、お芳ちゃんは、なかなかしゃがもうとしません。確かに、ものすごく漏れそうなのですが、不思議とそれが気持ちいいのです。
いつの頃からか、というのは、はっきりしません。この古寺に通うようになってからかもしれませんし、それより前からかもしれません。とにかく、ずぅっと、ギリギリまで我慢していると、身体中が、夏の暑さとは違う熱でかぁっとなるのです。両親や、和尚さんにさえ言えない、彼女だけの秘密の遊びでした。
「あン…… だ……めぇ……」
せわしなくお股をもじもじさせながら、「漏れちゃう、漏れちゃう」と思うほどに、もう胸のあたりがものすごくドキドキして、口から漏れる息は、本来の年相応に艶っぽくなってきます。
「おなか……いたいぃ…… もう……ゆるしてぇ……」
許すも何も、そこには、お芳ちゃん一人しかいません。いえ、ひょっとしたら、この苦しさをもっともっと楽しみたいと思う、もう一人のお芳ちゃんが、じっと彼女を見ているのかもしれませんでした。それぐらい、あるはずのない視線を、お芳ちゃんは感じているのでした。
「や……あ、あぁ…………」
ぶるぶると震えていた手が、いやがる彼女とは別の意志を持っているかのように、じわじわと下半身を這い回ります。
「ンふぁっ……! あ……んんっ……!」
暗闇の石の裏に潜むヒルのような指が、着物の裾から入り込み、腰巻きをもものともせずに、お芳ちゃんの肌に触れ……股の間を、ざわざわとうかがいます。するとどうでしょう、彼女自身も見たことがないのですが、花びらのようにびらびらとしたヒダがこりこりにしこって、月のものでもないのに、ねばねばの汁がいっぱいに溢れているのでした。
「……だから……ダメ……だって……ン……ばぁ……」
一刻も早くしゃがんでおしっこをしたいのに、お芳ちゃんのヒルは、まだイジワルをやめません。体を前屈みにさせながら、ねちねち、くちゅくちゅ、と変な音を立てながら、とろとろの花びらをいじり続けます。不思議なもので、触れば触るほど、熱いねばねばはどこまでもわき出してきて、ついには、内股に筋を作って流れるまでになります。
「くふ……んっ……!」
和尚さんに聞こえちゃいけない。そう思うのですが、変な――男が聞けば、艶っぽくてたまらない――声は、いっぱい出そうになります。その声をこらえることさえ、さらなるドキドキの元になるのでした。
「ゥんっ! ンッ! ……んく……うわぁあぁあぁ……っ……!」
野に咲く普通の花ならば、石臼に入れられてすりつぶされるぐらいにこね回しても、お芳ちゃんの股間のそれは、ますます大きく開くだけです。ぐちゅぐちゅ、にちゅにちゅ……と、静かな闇夜に、藍がめをかき回す時にも似た音が響き渡ります。
「うふ……あっ! ひ、く、ううううっ……!」
ガクガクと腰をふるわせながら、いよいよ、限界がやってきます。このまま盛大に漏らしてしまえば、きっとものすごく気持ちだろうなあ、と思うのですが……そうなると、きっと、着物が汚れてしまいます。すごく臭いだろうから、和尚さんが変に思うに違いありません。和尚さんに嫌われたら、お芳ちゃんは、すごくすごく悲しいのです。それだけは、避けなくてはなりません。
「はあっ……はっ……っく……うぅ……」
お芳ちゃんは、ありったけの根性を振り絞って、自分の股間で暴れ回る自分のヒルをひっぺがしました。
そして、いつもの場所、と言ってもいいぐらいのところに、いざしゃがみ込まんとして……人の気配に気づきました。
「……だれっ!?」
しゃがみ込むのをやめて、その気配の方を振り向くと……そこには、一人の男の子が立っていました。
「――呼んだかい?」
男の子は、強い調子で呼び止められたのもまるで気にしない様子で、ゆらり、と振り向きました。真っ暗闇の中にも、不思議と、その面立ちはよく分かりました。年の頃は、お芳ちゃんより少し上ぐらいでしょうか、切れ長の瞳に、ともすれば、女の子よりも白い肌。「お父さんが大事にしている壷、なんて言ったっけ? 『白磁』だったかな?」なんてことを考えます。髪も、男の子にしては長く伸ばしているのを首後ろで無造作に縛って、でもそれは、おしゃれじゃない、といった風ではちっともありません。まとう服は、ずっと昔の絵巻物のかから抜け出してきたようで、いつも着物に頓着のない自分が、ちょっぴり恥ずかしくなるぐらいです。
「……あ…… あわわ……」
お芳ちゃんは、ものすごく気まずくなりました。さっきの情景を見られていたとしたら、これほど恥ずかしいこともありません。何せ小さな村です。ウワサになれば、あっという間に広まるでしょう。
「……あなた……、だあれ?」
気持ちよさも、おしっこしたい気分も一息にどこかへ忘れながら、やっとのことで、お芳ちゃんの口から、言葉が出てきました。
静かな笑みをたたえて、かれは言いました。
「ぼくかい? ぼくは、アヤキ」
「あや……き……?」
名前すら、不思議な響きを持つようです。お芳ちゃんは、かれの声に魅入られたように、じぃっと立ちすくんだまま、少し首をひねるばかりでした。
「……君は、お芳ちゃんだね?」
「へ?」
なんということでしょう。初めて会った男の子のはずなのに、自分の名前を知っているのではありませんか。お芳ちゃんは、「村の中に、同じ名前の娘なんていたっけ?」と、微妙に見当違いのことを一生懸命考えて、それが無駄な努力だと気づくまで、また少しかかってしまいました。
「会いたかったよ……」
「あ…… ち、ちょ……っと……!?」
優しくも、どこか熱い声でアヤキ君は言ったかと思うと……そっと、お芳ちゃんを抱きしめました。さっきの一人遊びの気持ちよさに高ぶったせいでしょうか、敏感になった女の子の肌は、普通に触られる何倍もの強さで、かれの手触りを感じました。
「ひゃ……あ、うわ……ン……」
それが、ガキ大将のような乱暴さであれば、もっと抵抗もできたでしょう。
でも、アヤキ君の指はとても優しく、それこそ、壊れやすい宝物を愛でるような動きで……お芳ちゃんは、一人遊びの時よりもなまめかしく、かれの腕の中で、とろける吐息と共に身体をくねらせるばかりでした。
「可愛いよ、お芳ちゃん……」
アヤキ君の手は、ごく自然に、お芳ちゃんの股間へとやってきました。
「きゃぅっ……!?」
ぷりぷりの花びらも、同じく優しく触られて、びくん! と全身が震えます。電撃のような、と表現したいところですが、お芳ちゃんは、例の、鰻屋の手先の発明家が作った、現代で言うところの静電気発生装置である『えれきてる』なんて知らないのです。だから、「とにかく、ものすごく気持ちいい!」ということしか分からないのでした。
……ところで、ここでやっと、このお話の時代設定が、ちょっと昔であると分かるのもどうかと思います。作者には猛省を促しておきましょう。
さておき、優しい指に触られ続けて、すごくすごく気持ちいいのはよしとして……お芳ちゃんは、自分が今、猛烈におしっこがしたいことを思い出しました。
「やっ……やめ…… は、はなし……」
「だめだよ。最後まで、気持ちよくしてあげる……」
「ち、ちが……う、んぅうぅんっ……!!」
めいっぱいの力を振り絞りたくても、アヤキ君の与える気持ちよさの方が上で、どうにもなりません。かれの指は、いつの間にかお芳ちゃんの花びらの奥深くまで潜り込んでいて、もっともっとすごい音を奏でていました。
「や…… 出ちゃう……もう……だ、だ、だぁっ……め……」
体はこんなに熱いのに、冬の朝より激しく体を震わせて、思いっきり走ったときよりも声をかすらせて、お芳ちゃんの頭の中は、いよいよ真っ白になっていくのでした。
「いいよ――」
今までのうち一番の優しさでささやき、アヤキ君の指が、きゅっ! と、花びらの上あたりに膨れる、豆の部分をつまみました。そこが一番敏感なところだなんて、お芳ちゃんには分かりません。
「きひっっ……!?」
思いっきり全身を硬直させ……
「い……あぁあぁーーーーーーーーーーーっっっ!!!」

ぴしゅっ…… じゅっばぁあぁあぁーーーーーーーーーーーっっ!!!!

とうとう、こらえにこらえたおしっこをものすごい勢いで吹き出させつつ、お芳ちゃんは、真っ白に燃え尽きてしまいました。平たく言えばイッてしまったのですが、そんな概念は、彼女の中にはやっぱりないのでした。
「あっ! あひっ! い……あぁあぁ……すご……す……ごぉおぉほぉ…………」
地面をえぐるほどの勢いで、熱い熱いおしっこをたたきつけつつ、お芳ちゃんは、初めての絶頂に、それはそれは幸せな気分になるのでした。
「ほんとに、可愛いな……フフフ……」
アヤキ君の声をどこか遠くに聞きつつ、お芳ちゃんは、かれの腕の中で、ぐったりとしていくのでした。

そうして、幾日かが経ちました。あの不思議な少年との逢瀬は毎日のように続き、いつしか、お芳ちゃんは、かれに逢うのがとても楽しみになっていました。もちろん、和尚さんに会うのも楽しみなのですが、やっぱり、頭の中は、アヤキ君でいっぱいなのでした。
「芳ちゃんや、あやかしに魅入られてはいけないよ」
そんな、ある日のこと。かれに逢うためにいっぱいおもゆを飲んでいて、そろそろ庭へ行きたいな、と思ってモジモジしていると、和尚さんが、ずいぶんまじめな顔で言いました。
「あやかし……?」
お芳ちゃんには、何のことだかさっぱり分かりません。深く考えることはせずに、続けておもゆをごくごく飲みます。あっというまに空になった湯飲みにお代わりをくれながら、和尚さんが続けました。
「あの、アヤキという男の子だよ。あれは、きっとあやかしに違いない」
「えっ……!?」
お芳ちゃんは驚いて、あやうく湯飲みを落とすところでした。
「お手洗いに庭へ行く時に、近頃のお芳ちゃんが何をしているか、儂は知っているよ……」
「え……と、あ、あれ……はぁ……」
一気にしどろもどろになりながら、お芳ちゃんは慌てます。
まさか、和尚さんに見られていたなんて……!
いけない子だと思われるだろうか、嫌われるだだろうか、もう来るなと言われるだろうか……ここに来ることができなかったら、あの、かれとも会えなくなる……?
お芳ちゃんは、とても悲しい気持ちになりました。でも、和尚さんは、いつもの穏やかな笑みで言いました。
「怖がることはないんだよ。ただ、あの男の子には気をつけた方がいい、と言っているだけなんだから」
「どういうこと……?」
和尚さんの笑みは、アヤキ君とは違う方向に、お芳ちゃんを安心させます。やっと少し落ち着いて、彼女は訊ねました。
「たぶん、かれは物の怪だよ。考えてもごらん? どうして、初めからお芳ちゃんの事を知っていたんだい? どうして、真っ暗な夜でも、姿がはっきり見えるんだい?」
「……そ、そういえば……」
「『アヤキ』という名前だってそうだ。きっと、『妖鬼』と書くに違いない。あいつは、いつかお芳ちゃんを喰らう鬼だよ」
「う……うわ、あ…………」
ゆっくりと説明されて、お芳ちゃんは、いっそう血の気の引く思いでした。
なるほど確かに、かれには、怪しいことだらけです。なすがままにされてきて忘れていましたが、そういわれれば、やっぱり彼はどこかおかしいのです。
「どうしたら……?」
「儂に任せなさい。今から、芳ちゃんの身体に、ありがたいお経を書いてあげよう。そうすれば、あやかしに見とがめられることはないだろう……」
「う、うん……!」
「全身に書くから、服を脱いでもらうよ。少しだけ恥ずかしいだろうけど、我慢、我慢……」
お芳ちゃんは、言われるまま、服を全部脱ぎました。実は、いつもの尿意がいよいよ迫っていて、ほんのちょっと、お股のあたりが濡れ始めていたのですが……状況が状況です。何も言わないことにしました。
「じっと、してるんだよ……」
生まれたままの姿になったお芳ちゃんに、和尚さんが、墨を含ませた筆で、なにやら難しい字を書いていきます。口ではブツブツとお経を唱えながら、その目はとても真剣で、ちょっぴり怖いぐらいでした。
「……よし、これでいい。辛抱させて悪かったね。じゃ、行っておいで」
「うん!」
顔からつま先までびっしりとお経の書かれた身体で、お芳ちゃんは、急いで……こんどこそ、普通に用を足そうと、庭の方へ向かいました。

……やがて、いつものように、庭で、かれの姿を見つけました。あいかわらず、真っ暗闇にも、その姿はハッキリと浮かび上がっています。ただ、いつもと違っていたのは、なにやら地面にかがみ込んで、さっきの和尚さんみたいに、ぶつぶつと唱えていた事でした。和尚さんの話を聞いた後だと、なおさら、怪しく思えます。
本当に見えてないんだろうか? 話し掛けたいのですが、和尚さんの心遣いを無駄にしてしまうのも嫌です。そのまま、横を通り過ぎようとしました。
しかし……
「――今日は遅かったね、お芳ちゃん。待ってたよ」
(……!?)
立ち上がり、明らかに自分へ視線を向けながら、アヤキ君が言いました。思わず、硬直してしまいます。
(喰われる?? 喰われる!?)
お芳ちゃんは、恐ろしさでおもらしをしそうになります。
でも、かれは、いつもの優しい笑みで続けました。
「和尚さんに、何かされたのかい? 今の君は、耳しか見えていないよ?」
(はっ……!)
そうです。頭のてっぺんからつま先まで、きっちりお経を書いてもらったつもりが……耳だけ、真っ白なままなのです。だから、アヤキ君には、女の子の耳だけが、ふわふわと漂っているように見えているのです。
「……そら、つかまえた……!」
「あんっ……!?」
そうなれば、見えていることとあまり変わりはありません。あっという間に、お芳ちゃんは、アヤキ君の腕の中に収まってしまいました。
「は、はなして……! この……鬼ぃ……!」
「……誰が鬼だって?」
アヤキ君はクスクスと笑いながら、じたばたもがく耳だけに向けて、熱い吐息を「ふうっ!」と吹きかけました。
「ひゃんっ!?」
お芳ちゃんの背筋にぞくぞくっとしたものが走り、一瞬、動きが止まります。
「ほら、おとなしくなった――」
そうなれば、後はアヤキ君のなすがままです。ざわざわと手を滑らせ、見えなくてもかれの手さぐりで、柔らかい肌を正しく探り当てていきます。
「あふ……う、んんっ…………」
今晩は、全身にお経を書いているせいで、彼女は丸裸です。だから、彼の手をいっそう強く感じて、すぐに、抵抗をしようという気はなくなってしまいました。
「身体、熱いね……お芳ちゃん……」
アヤキ君はうっとりとつぶやいて、お芳ちゃんの耳へ、いとおしげに舌を這わせ始めました。ぺちゃくちゃ、ぼそぼそ……という湿った熱い音がすぐそばに聞こえ、お芳ちゃんは、もっともっとぞくぞくするのでした。
「や……あぁぁっ…… あ……れぇ……?」
そのまま、アヤキ君の舌は、彼女の体の線に沿い……なぞられた跡はお経が消え、まだらに肌が現れ始めました。
「全部、見せてね……」
舐められるほどに、お芳ちゃんの肌は、どんどん闇夜に浮かび上がり……やがて、すっかり丸見えになってしまいました。
「う……うわ……や、あぁ…………」
せっかくの和尚さんの心遣いも、全部無駄になってしまった格好です。
「――綺麗だよ、お芳ちゃん」
「……っ……――――」
でも、間近に見えるにっこりとしたアヤキ君の笑みはやっぱり素敵で……胸もお股もいっぱい触ってもらって、もうすごく興奮しているせいもあって……お芳ちゃんは、もうどうでもよくなっていました。
「して…… アヤキぃ……」
瞳をうるうるさせながら、ひし、とすがりつけば、硬く尖った乳房の先が、アヤキ君の胸板にもよく分かりました。
「大丈夫……。いっぱい、してあげるよ……」
うんうんとうなずきながら、アヤキ君は、お芳ちゃんにとどめを刺しにかかります。
「ふわ……あぁっ……!」
お股に手を差し入れれば、「ぐちゅうっ……」とすごくいやらしい音がして、お芳ちゃんは、気持ちよさにガクガクと震えます。今日は、すぐに達しそうでした。たとえその後、かれに喰われたとしても……いいや、と思っていました。それぐらい、お芳ちゃんは、アヤキ君のことが好きになっていたのでした。
「あふ……んっ! んんっ! んう…… あ……やき…… あやきぃいぃ……!」
「可愛い……可愛いよ……お芳ちゃん……」
何度もかれの名前を呼びながら、間違いなく、お芳ちゃんは幸せでした。
このまま、いつものように、おしっこといっしょに気を遣ってしまえば、もっと、幸せに、かれが、たとえ、ばけもの、だった、に、せ、よ………………
「ん……は、あぁあぁあぁーーーーーーっっっっ!!!」

しゅぴっ…… じゅ……ばぁあぁあぁーーーーーーーーーーーっっっ!!

とうとう、お芳ちゃんは、思いっきりイッてしまいました。今までで一番の勢いで、鉄砲水もかくやと言わんばかりにおしっこを出しながら、何度も、何度も、絶頂の余韻に震えます。いつもの場所に、ばたばたばたとおしっこ混じりの泥が散りました。
「はっ……はあっ……あ……う…… ンン……」
「……お芳ちゃん……」
よだれまで垂らしてぐったりしているお芳ちゃんを、アヤキ君は、ぎゅっと抱きしめているのでした。
「お芳ちゃん、ちょっと、ここで待ってて?」
「……ふえ……?」
不意に、アヤキ君は自分の服を脱いで地面に広げたかと思うと、そこへ、お芳ちゃんを横たえました。
ああ、いよいよあたしを食べるのね、さしずめ、お皿に盛られたごちそうってところかなぁ……? と、どこか人ごとのように、お芳ちゃんは思いました。
「じっとしてるんだよ……?」
「うん……」
でも、すっかり覚悟の決まっている彼女は、言われるまま、静かにうなずくだけでした。
「……えっ……?」
自分に覆い被さって、かぶりついてくるのかと思ったら……違いました。アヤキ君はくるりと背を向け、しばらく、闇夜に向かって歩きます。そして、誰もいないはずの夜に向かって、鋭い声で言いました。
「毎度毎度、盗み見とは感心しないな……!」
――すると、ざわり……と闇夜がさざめいて、もう一つの人影が現れました。
(あれは……!? 和尚さん……!?)
そうです。そこにいたのは、ほかでもない、あの和尚さんではありませんか。
(……あれ……?)
ただ、お芳ちゃんが首をひねっていたのは……その和尚さんの顔が、これまで見たことがない、怒りに燃えていたことでした。
「……あれが、彼の本性だよ。伏せてっ……!」
「ケアァアァッ!!!!」
お芳ちゃんが伏せるのと、人のはずの和尚さんが、禍々しい、獣のような牙を剥いて襲いかかってくるのは、ほぼ同時でした。「助けて!」と思った次の瞬間……
《天魔 覆滅ッ!!》
凛とした言葉が聞こえ、あたりに、ものすごい爆音が響きました。
「……??」
おそるおそる顔を上げると……ごうごうと燃えさかる炎の中、和尚さん……いえ、それまでずっと和尚さんのふりをしていた物の怪が、断末魔の叫びを上げながら、今まさに燃え尽きようとしていました。
「おっしょ……さん……?」
「違うよ、お芳ちゃん。よく見てごらん……」
いつの間にかそばに戻ってきてくれていたアヤキ君に抱き寄せられながら、お芳ちゃんは、炎に照らされたあたりの闇夜を、何気なく眺めました。
……すると、なんということでしょう。見る見るうちに、それまで通っていたお寺の姿が溶けてゆき……やがて、炎も消えた頃には、何もない、ただの荒れ地になっていました。
「和尚さんが……ばけもの……?」
「そうだよ。お芳ちゃんを手なずけて、安心させた頃に食べようとしていたんだ」
「じゃあ、アヤキ、は……?」
「ぼくは、そのばけものを退治しにやってきた、退魔師さ」
――それから、お芳ちゃんは、アヤキ君から、かいつまんで話を聞きました。
ああいうバケモノは、人の寂しい気持ち……お芳ちゃんの場合は、おじいちゃんが生き返ったらなあ、という思いにつけ込むのだと。しかし、すぐに襲って喰らったのでは、抵抗されるし、村人にも怪しまれる。だから、初めは優しい顔で近づき、警戒心がなくなったところで、その信じていた気持ちを味付けにして、喰らう……。
「君が飲んでいたおもゆも、実は、考える力をじわじわと奪う物だったんだよ。あのままずっと飲み続けていれば、頭の中は、もっと幼くなっていたはずさ」
「そう……だったの……?」
なるほど、あの『和尚さん』に逢うようになってから、親は、「なんだか、日が経つごとに子供(ワラシ)っぽくなっていくねぇ……」とため息をついていた理由が分かりました。アヤキ君は、他ならぬ彼女の親から、娘の様子を探るように頼まれてやってきたのでした。
「これから、徐々に元に戻っていくはずだよ。ほんとの君は、もう一人前の女の子だ」
「……うん……!」
うなずいて、さっそく頭が戻り始めたわけでもないのでしょうけれども……お芳ちゃんは、ふと、退治されるまでに、かれと、いっぱい変なことをしたのを思い出してしまいました。
「……あ、あれは……ちゃんと、理由があったんだよ?」
真っ赤になっているお芳ちゃんを見て察しがついたのか、アヤキ君は、ちょっと珍しくしどろもどろになりながら、弁明を始めました。
「ほ、ほら…… さっきの火薬……実は、君のおしっこで作ったんだよ……」
「か、火薬を……!?」
アヤキ君が照れまくっているので、代わりに作者が説明しましょう。
木炭の粉と、硫黄の粉と、おしっこを藁に染み込ませて太陽に干して結晶させて出来た粉……これらを混ぜると、黒色火薬ができるのです。お芳ちゃんがアヤキ君にイタズラされておもらししていた地面には、実は藁が埋めてあり、たっぷりと彼女のおしっこを吸っていました。それを、夜が明けた頃に、アヤキ君は掘り返し、せっせと天日に干して、火薬の材料……現在で言うところの、硝酸アンモニアの結晶を採取していたのです。ちなみに、天日干しでも結晶化に足りない時間は、かれの退魔師としての術で、局地的に進めたと思ってください。ご都合主義万歳。
「じ、じゃあ…… どうして、その、自分の……おしっこ、を……」
確かに、別におしっこが男の物でも、女の物でも、成分的には大差はありません。もっともな疑問を、恥じらいながら訊くお芳ちゃんに、アヤキ君は、ますます小さくなりながら答えました。
「そ、そのぅ…… 実はぼく、退魔師としては、まだまだ未熟って言うか……特殊って言うか…… 房術……つまり、女の子と絡むことでしか、力が出せなくて…… その術も……実践したのは、さっきが、初めてで……」
お芳ちゃんは、もぐもぐと言葉をこもらせるかれの様が、ちょっと可愛いと思いました。同時に、あの夢のような気持ちよさが、術のためだけだったなら、とても寂しいと思いました。だって、今の自分は、かれのことが好きなのですから。
「でも……お芳ちゃんが可愛い、って思うのは、ほんとなんだ。だから、自分でも信じられないぐらい、強い術が成功した。だから……その…… えっと、でも、それだけじゃなくて……」
次にかれが顔を上げたときは、すごくまじめな、一人の青年の顔になっていました。静かに、じっと瞳を見て、言います。
「……これからも、ずっと、協力してくれないかな?」
「――うん!」
お芳ちゃんは、満面の笑顔でうなずいてアヤキ君に抱きつき……イタズラっぽく、そのほんのり赤いかれの耳を、かぷり、と甘く噛みました。

――おしまい

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