がぼっ 6 びくり

SF(少し・不条理)
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「へへぇ……」
温泉の効能だろうか、彼女の肌は、本当ににすべすべしていて、僕の身体に吸い付いてくるようだった。僕の胸に押しつけられる膨らみから、もう一つの鼓動が感じられる。
そして、文字通り、目と鼻の先に彼女の顔がある。心なしか、僕にかかる息が荒い。
「アタシ、キミのこと気に入っちゃった。だから、キミに、養分をあげちゃおう……」
「え……?」
そのセリフの直後だ。
「んっ……」
小さなうめきが聞こえたかと思うと、僕の下半身に、熱い感触が広がった。
周りのお湯が、かげろうのように揺らめく。そのかげろうは、キンモクセイを淡く溶かしたような色と、不思議な香りを放っていた。
「えへ……」
ひとしきりの熱さの後、彼女の顔は、この上なくうっとりしていた。
そして、照れくさそうに微笑むのだ。びくり、びくり、と、余韻にふるえる身体を残して。
……はっきり言おう。ムチャクチャ可愛い。
「あは……あははははっ」
僕もつられて大声で笑った。そして……
「んっっ」
彼女の唇を、自分の唇でふさいだ。
僕にそうさせるほど、その時の彼女は、可愛かったんだ。
「んっ……んーーーー……」
でも唐突すぎて、根比べのようなキスになってしまった。そして、負けたのは……僕だった。
「ぶはぁっ」
「アタシの勝ちぃ」
「くそぉ……」
「うぅん?」
彼女が、わざとらしい調子で目線を下にやる。
「あー! ダメだなぁ。ココにばっかり『栄養』が行ってるぅ」
そう、僕のナニは、もはやガチガチだ。
「そのつもりじゃ、なかったの?」
僕は、にやりと笑みを返した。ここまで来たら、もう引っ込みがつかないぞ。
「ふふっ……ちょっとは……ね」
そして、今度は彼女が、僕の口をふさいだ。
静かな、ゆっくりとした、長いキス。同時に、彼女の体が大きくグラインドし始める。
すべすべした身体同士が擦れ合う。まるで、二つの粘土をこね合わせて、一つにするように。
やがて、彼女の股間が当たっている僕の太ももあたりに、違ったぬめりが感じられるようになった。
「…………」
「…………」
涎まみれになった口が、静かに、糸を引いて離れる。
そして、ゆったりと、互いに微笑み……
「あんっっ……!」
粘土は、一つになった。
「はあぁんっ……ん……うふぅぅ……!」
「くっ……あぁ……!」
温泉とも、オシッコとも違った熱さが、全身を駆けめぐる。
静かに、でも深くえぐりあい、包みあう。このまま、お湯に溶けてしまえとばかりに、長く……。
抱え込んだ眼下にある、熱に朱を帯びた彼女の肩。その細かな肌から、ぷつりぷつりと汗の珠が生まれるのが見えた。きっと、彼女の目に見える自分の肌も、同じように見えているんだろう。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「うっ……ンッ! い……いいよぉ……」
ザバザバと、それまで以上に、湯船に波が立つ。
僕に身体を預けながらも、縁に手をかけ、存分に腰を使う彼女。その細い腰に絡めた僕の手は、さながらロデオの手綱を引く騎手のそれだった。
「ンッッ ウゥンッッ いっ……いいぃぃ……!」
温泉に薄まることのない粘りでいっぱいの穴と、ふくよかな肉の感触にある硬い一カ所が、彼女の鼻にかかった甘い声と共に、僕の身体中へ快感を刻み込んでいく。髪をまとめていたタオルはいつしかほどけ、湯舟に浮かんだそれは、激しい動きが立たせる波に、いつしか遠くへ流れていた。そして、その下にあった彼女の長い亜麻色が、水面にきれいなマーブルを描いていた。
「はあっ! はあぁあぁっ!! ねえ……キミ……来ちゃう? 来ちゃいそう アタシも、アタシもぉぉぉ……」
ゆるんだ顔でうなずきあいながら、お互いを襲う衝動に従う。
「クフッ……」
「んっ……」

どくんっ どくんっ

温泉に入る前のうっ屈も、温泉に一人で来た物寂しさも、何もかもを乗せた白を、僕は彼女の奥に注ぎ込んだ。
「ん……うふぅ……」
彼女は、僕から離れなかった。肩越しにクスクスと笑いながら、膣を、また小刻みに動かし始める。
「わ……わわっ……」
すると、僕の物は萎えようとしたところを途中で引き返し、再び初めの硬さを取り戻した。いや、もしかしたら初め以上かも知れなかった。
「もっと、養分ちょうだい?」
甘えたようにそう言って、僕に頬ずりしてくる彼女。拒む理由は、どこにもない。お湯の浮力に一層軽い、彼女の丸い尻を抱えながら、湯船を出る。
「さすがに、のぼせちゃうからさ?」
「そうね。気が利くね、キミ♪」
細かなタイル張りの床に寝そべって騎乗位を取りながら言う僕に、彼女は楽しそうに腰を揺らした。つなぎ目からニチャニチャと聞こえる音が、笑い声の代わりだった。

ぐぶっ……! ちゅくっ!
じゅるっ! ぎゅぶうっ!

跳ね上げる腰が、ヒダの一番奥、行き止まりを叩く。
「いっ……ひあっ! あっ! あくあぁぁ……」
震える唇をいっぱいに開いて、つまりがちのあえぎを吐きながらも、みずから腰を振って、より奥をえぐらせる彼女。振り乱す亜麻色が散らすしぶきに、熱いよだれが混じって僕の胸板に降る。
「はぐっ……う……うふあぁあぁ……キミ……すごぉい……奥に……思いっきり当たってるよぉ……」
「そりゃ良かった。でも、もっともっと良くなるみたいだね、ここ見てると……」
「えっ? あ……きゃはあぁあぁっ!!」
歓喜の悲鳴と共に、一段と締め付けが激しくなる。
僕が触ったのは、つなぎ目にある彼女のクリトリスだ。完全に鞘を飛び出し、指二本でつまめるぐらいに勃起したそれは、球根から出た根のようだった。
「はひっ!! かひっっ いっ!! いひいぃぃぃ……!!」
あばらが浮き立つほどに身を反らせ、追いつかないあえぎに顔をこわばらせる彼女。仰ぐ顔から大きく伸びた舌と、小指の先ほどにそそり立った乳首が、芽だ。
「あっ!! あぁあっ!! あひっ!! イクっっ!! イッちゃうふぅぅ……」
「ぼ……僕も……!!」
うねるヒダはその複雑さを増し、僕の中にも、最初と変わらない量の衝動が来る。
「くっ……」
「んあぁっっ……」

どぶっっ!! びゅくぅっっ!!

二回目にしては、さっきの倍は出たんじゃないだろうか?
「あふ……あ……いっぱい……」
「はあっ……あ……あぁ……」
満足げに微笑む彼女に、僕も同じく荒い息で微笑んでうなずいた。
「でもぉ……まだ出るよねぇ……?」
「えっ?」
怪しげな笑みが、その泣きぼくろの目に浮かんだかと思うと……みたび、ヒダの動きが僕の物を奮わせるようなそれになり、硬さが戻った。そして、気分も。
「もっとちょうだい? もっともっともっともっと……ウフフフフッ……」
「よぉし……!」
わき上がる無尽蔵の力に、「なぜ?」という僕の野暮な疑念は、跡形もなく吹っ飛んだ。

それから僕たちは、あらゆる形で交わった。
彼女の身体はとても柔軟で、途中一度も抜くことなく、いろいろに体位を変えられた。
『抜かず三発』どころの騒ぎじゃない。何発膣の奥に注ぎ込んだか、僕自身忘れるほどだった。それでも、硬さ、精液の量、ともに萎えなかった。

「あんっ!! んっ!! んううっ!! イッ!! イクッ!! イクぅぅぅぅっっっ!!」
「それっ……!!」

びゅぶっ!! びゅっ!! びゅるっ!!

彼女の絶頂と共に迎える、何十回目かの射精。どれだけ注ぎ込んでも、彼女の子宮から僕の精液があふれることはない。不思議だけど、全てを飲み込み尽くしているのかと思うと、ちょっと嬉しくなって、また劣情がわき上がった。

しかし……

バチッ

余韻に浸る腰から、尾てい骨を通じて背骨を伝い、頭のてっぺんまで、もの凄い速さで電流のような感覚が走り抜けた。ちょうど、負荷に耐えかねてブレーカーが落ちるような……

「あ……………………………………?」
僕は、バックスタイルの立て膝から、そのまま後ろにのけぞるように倒れ……

どぼぉぉぉ……ん……がぼがぼ……

湯船に、転げ落ちてしまった。

つづく

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