がちゃっ 4 据え膳食わぬは……?

SF(少し・不条理)
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がちゃっ……

僕は、その部屋のドアを開けた。
薄暗く照明を落とした部屋に、彼女は、いた。
「…………」
ベッドの上に、並んで座る。
シーツとは違う白さをもった細い指が、ぼんわりと浮かび上がる。
「あっ……」
重ねた手に上がる、小さな声。少し冷たい。僕は言った。
「お兄さんから、話を聞いたよ」
「ばかばかしいと思った?」
「ずいぶんだな、そんなことはないよ」
「哀れんでるとか?」
「それもはずれ」
「都合のいい据え膳?」
「ちょっと、ね」
淡々とした、突き放した問答。他人を寄せ付けまいとして、みずからが傷ついているような……そんな痛さがあった。
「でしょうね。兄さんはああいうけど、私は……」
おそらく、「どっちでもいいのよ」と浮ついた声で言おうとしていたところを、僕は重ね合わせた手を強く握って遮った。
「怖いのかな?」
「…………」
きゅっと唇を噛み、もう片方の手が、膝頭にめり込む。震える声。
「だって……私たちの世界じゃ……世迷い言だもの……。男の人と……全身でセックスしたいだなんて……」
そして彼女は、自分が重度の妄想におかされた狂人である、とばかりに続けた。
「こうやって手を繋ぎたい、抱きしめてもらいたい、唇から間近に『好き』ってささやいて欲しい! そう言ったら、両親は私を病院へ連れていこうとしたわ! 仕事のストレスで、この子は狂ってしまった。奇妙な妄想にとりつかれてしまったって……!」
僕の手にきつく食い込む、彼女の爪。その痛みなんて、涙のにじむ彼女の横顔を見たら、毛ほども感じなかった。
「私たちの世界じゃ……まぎれもない妄想なのよ……それが叶うっていうんだもの……怖いわよ……」
ポケットから取り出したハンカチ――どうも、兄とお揃いらしい――で、涙を拭う彼女。ふうっ、と、溜め込んでいた物を吐き出し終わった息をつく。
「…………」
そして、初めて僕と目を合わせる。
あの公園で会ったときは、冷たい感じの、やり手キャリアウーマンって所だったけど……今は、まさに抱きしめたくなるような少女に見えた。
「あ…………」
僕は、彼女を抱き寄せて膝の上に乗せた。
女性にしてはちょっと大きいかな、と思えた身体も、不思議と、「ちょこん」という感じで乗っかってしまった。
「あむッ……!?」
抱き寄せて軽く重ねた唇に、彼女は目をむいて驚いた。
「なッ……何をするの……!?」
「キスだよ」
「キス……?」
どうも、いきなりペニスを突っ込むのが当たり前のこの世界では、キスという概念もないらしい。
「……あんっ……!」
僕は、言葉で説明するのをやめ、何度も何度もその唇をついばんだ。
「舌、出してみて?」
「はむっ……ん……うう……」
ちゅるちゅると音を立てさせながら、じっくりと口内をなぞっていく。全くの未知に逃げていた彼女の身体が、だんだんとほぐれていくのが分かった。
「服、脱がせるよ……」
「……うん……」
彼女は、キスの快感で体も心も力が抜けてしまったらしい。こくんとうなずくと、僕に押されるままに倒れ込む。
ブラウスのボタンを脱がせていくと、以外と地味目のブラジャーが現れた。フロントホックのそれを外す。中から、白くたわわな膨らみがあふれ出す。
つかめば、それは手のひらに余り、指の合間から柔らかくこぼれる。
「……ンッ……!」
そして、彼女は刺激に上半身全部を震わせ、そのたびに乳房はよく揺れた。
「はぁんっ!」
吸い込むような声。「あ……あぁっ……」とおびえるような声が続き、彼女の手が、僕の頭を押しのけようとする、それでも、僕は口に含んだ乳首を離さない。音を立てて、吸い続ける。
「ぷうっ……」
「はあっ……あ……胸って……こんなに良かったのね……」
だ液の糸を引かせて、口を離す。薄闇にも濃い桃色が分かるその乳首は、すっかり硬くそそり勃っていた。
「こっちの人って、もったいないことしてるんだなあ……」
「アァンッ……!」
苦笑いをしながら、だ液にぬめる乳首を指で転がす。びくびくと反り返る背中に腕を回し、身体を抱きかかえながら続ける。
「ウゥッ……! ンッ! ンンッッ!!」
いつしか抱え込まれた顔。そこからも存分に柔らかさを楽しみながら、手を下半身へ伸ばしていく。
ちょっと荒っぽくスカートに手を潜り込ませ、股間を探る。下着越しのぷっくりとした丘、中央を分けるクレバスには、ねっとりとした流れが出来ていた。
そこへ、指を何度も往復させる。熱い蜜の粘りは下着の抵抗を無きがごとくにして、ますますなめらかに滑る。
「ウフッ! ウッッ!! ンッッ!! アァァン……ッッッ!!」
甘い声と共に跳ねる腰が、ベッドのスプリングを大きくきしませる。それにも消えないぴちゃぴちゃという水音が、あふれる多さをよく知らせていた。
「下、脱がせるよ……」
「あっ……」
彼女の発する熱と湿り気に、僕の手は、まるで酔っぱらいのように無遠慮だった。スカートに食らいつく熱中の顔を見てか、彼女の「くすっ……」と笑う声が、上の方からした。
「うわあ……」
その光景を見て、僕は思わず感嘆の声を漏らした。べっとりと透き通った下着ごしに、全部が見えた。それはもう、開ききった花びらから、膨れ上がったクリトリスから、ぽっかりと口を開けた穴まで。
「……いやぁっ……」
そんな反応を見せる本人は、恥ずかしさに足を閉じようとする。まるで、初めて見せた性反応に戸惑う処女みたいだった。たぶん、どれほどこの穴にペニスを受け入れてきていても、そこを見られたことはないんだろう。
「(つくづく、可哀想だなあ……)」
思いながら僕は、もはや意味を成していないそのショーツを脱がせた。肉と布の間には、たくさんの糸が引いた。
「あはぁぁんっっっ!!」
愛液にむせ返るその花弁に、僕はためらわずにむしゃぶりついた。
「いっ……嫌ぁぁぁっ!! 汚いっっ!! 汚いのにぃぃぃっっ!!」
触れられたことや、舐められたことのない女の反応だった。もちろん素直に従うはずはなく、肛門まで含めた全部の性器を、喰らうがごとくに舐める。
「だめっ……! あっっ! あひっっ!! いっっ! いぃぃ……」
僕の頭を押していた彼女の手は、徐々に力を失い、いつしか自分の股間へ引き込むようになっていた。口の中はもう、熱く粘ついた汁でいっぱいだった。
「ぷうっ……すごいね、飲みきれないや」
「あぁっ……! やめちゃ嫌ッ! 嫌ァァァ……ッ!!」
「もちろん、まだ終わらないよ。ほら……」
服を脱ぎ、張りつめきったモノを彼女にかざす。身体をまたぐようにして、ぼう然としている顔の近くへ持っていき、言う。
「触ってみて?」
「……えっ……ええ……」
淫らな蜜を十分に味わって、既に先走りのたれる僕の肉棒に、白い手が触れる。
「あつっ……!」
驚いたのは一瞬で、すぐに彼女は「はぁっ……」という熱い吐息と共に、全体を触り始めた。
「これが……おちんちん……外れない……」
うっとりと言いながら、引き寄せられるように唇が近づき、触れた。
「うあっ……」
びりりとした快感が、背骨を一瞬駆け抜ける。それを表した顔を見て、彼女の唇の動きはより積極的になる。しゃぶりながらの声。
「あぁ……男の人の感じる顔が、こんなに近くに見える……おちんちんのピクピクも、すごくよく分かるわ……素敵……すてきぃぃ……」
暗い光に、だ液にまみれた僕の肉棒と、彼女の口の端からあふれるヨダレが、きらりと光った。
「んっっ! んんっっ! んぐっっ! うふぅっ!」
じゅぷじゅぷとだ液を泡立たせながら、夢中で僕のモノをしゃぶる彼女。歯は立っておらず、結構うまい。ひょっとしたら、この日のためにイメージトレーニングでもしていたのかも知れなかった。
「うくっ……ん……あぁぁっっ……!」
快感は加速をつけ、止めることの出来ないところまで来る。僕は、彼女の頭をつかんで、腰をより奥へ突き立てた。
「うぶっっ! んぐっっ! うふっっ! ううっっ!」
「出すよ……!」

どぐんっっ!!

「うぶうっっっ!?」
僕は、彼女の口の奥に、精液を注ぎ込んだ。
「んぐ……お……おほぉぉ……ん……」
ごくん、ごくんと上下する喉。全部飲んでいるようだった。
「くふっ……う……ああ……精液って……こんな味だったんだ……上から飲んでも……おいしい……」
亀頭と唇に白い糸を渡らせながら、またもや彼女はうっとりという。なんだか、乾ききった砂漠で一杯の水をやっと飲めたような、幸せそうな顔だった。
「ああ……あなたのオチンチンまだ硬い……もっと出るわよね? ねぇ?」
手でしごきながらの甘えた声に、僕は「もちろん」とうなずいて続けた。
「待たせてごめんよ。じゃあ、今度は下の口だ……」
「あっ……」
足を大きく上に上げる。改めてむき出しになる性器一帯。普通の正常位の姿勢だけど、彼女には初めて取る姿勢のようだ。とまどいの色が濃い。
「こうして入れたら、お互いの顔がよく見えるし、抱き合っていられるから、ね?」
「……そうね……」
先端をあてがう。するとまるで、興奮にめくれた花弁が自分からたぐるように、狙いが定まった。ゆっくり、腰を突き出していく。
「ふあっ……!」
フェラで更に高ぶったのか、白濁した愛液を垂れ流す小さな穴は、「ちゅくん」という可愛くも聞こえる音を立てて、いともたやすく僕を根元まで受け入れた。
「重いかな?」
「くふっ……う……はぁぁ……っっ……」
僕の言葉に、彼女はうめきながら首を振る。しばらく荒い息を付き、うっすらと開いた目は……この上なく嬉しそうに微笑んでいた。背中に腕が回り、たぐられた耳に聞こえる囁き。
「熱いわ……あなたのオチンチン……でも、それ以上に身体があったかい……」
押しつけあった胸板にコリコリと乳首が踊り、ふれあう熱がしっとりをと汗をにじませる。普段ならちょっと不快なそのぬめりも、今は、二人をとろかす魔法の油だった。
「ンッ……ウフウゥゥ……くっ……」
腰は振らず、穴だけを締めてくる彼女。喜びを伝えるように、ヒダの隅々までが、僕の物を包み込む。そのうねりは十分な快感だった。
「ァハァッ……気持ち良いのね?」
ピリピリと走る快感に顔を緩ませながら背筋を反らせる僕を見て、彼女が嬉しそうに言う。僕は「そりゃもう……」と返して、よりいっそう胎内をかき回そうとした。
「あっ……ちょっと待って……!」
と思ったら、彼女に止められた。勢いを削がれた僕に、恥じらう声が言う。
「もう一回、さっきの……『キス』……して?」
静かに目を閉じて、突き出される濡れた唇。
こんな時、言葉は無駄な飾りでしかない。きつく吸いながら、髪を撫でる。
身体が離れることのないように、腰に円を描かせるようにすり合わせる。
亀頭の先端が膣壁を拡げるようにえぐり、愛液にまみれた互いの陰毛が、独特の音を立てた。
「くふ……うぅぅんっっ……!!」
膣をこすり上げられる快感と、性器全体を恥骨でこね回されるそれとに、彼女は、奥底から身体をくねらせてあえいだ。僕の背中を抱く手に、いっそう力がこもる。
「君の中、ものすごく熱いよ。ヒダヒダもクリトリスも、パンパンにしちゃってるんだね。根元の当たりにぶつかって、よく分かるんだ」
ちょっぴり意地悪く微笑みながら、さらに深く腰をねじ込む。
「あんっっ!! あっっ!! んああぁぁんっっっ!!」
甘く大きな声と、卑わいな粘液音、それと共に、確かに、自分の陰毛の中に、膨れ上がった肉芽の感触を感じることが出来た。
「はあっ……あああっ……あ……?」
そこで、彼女の顔に雫が垂れた。僕の汗だ。
「あんまり熱いから、こんなになっちゃった」
「あはっ……すごいのね……」
照れも隠しもせずに笑顔で言う僕に、彼女はクスクスと笑い返し……
「はあっ……ん……しょっぱい……んふふっ……」
顔をたぐり寄せ、その汗を舐めた。そして、媚薬を舐めたかのように言う。
「私も……熱いの……。おまんこだけじゃなくて、体中……奥の奥から……こんなの……初めて……はじめてぇ……」
間近に見つめる目は半ば虚ろで、ぱくぱくと震える唇から続かない言葉の代わりに、中の締め付けがどんどんきつくなってくる。
「すぐにでも、イッちゃいそうなんだね?」
質問であると同時に、僕の今でもあった。彼女は、こくんとうなずいて、みたび、目を閉じて唇をつきだした。
「ぅんっ……ん……んむうぅーーっっっ……!!」
しっかりと互いを吸いあいながら、僕はフィニッシュの体制に入った。
知りうる限りの複雑さをして腰を突き立て、中をかき回す。

じゅぶんっっ!! ぐちゅんっっ!! ずぶんっっ!! ぎゅぶんっ!!

「んっっ!! んんっっ!! んぐっっ!! ふうぅぅんっっっ!!」
凄まじい粘液音と、息詰まるあえぎ声。一緒に、イケそうだ。
「ん……ううっ……くふぅっ………………っっっ!!」
「うっ……!!」

どくんっっ!! びゅくっっ!! びゅるっっ!!
じゅばっ……しゃあぁあぁぁぁ………………

精を膣へ注ぎ込む僕と、絶頂の勢いで、おしっこを吹き出させる彼女。

しゃばしゃばしゃばしゃば……

灼けるように熱い奔流が、僕の下腹部に叩き付けられる。
彼女は、快感に呆けた顔の中に、漏らしてしまったことを詫びる色を混じらせた。
「あんっ……!?」
僕は、ひとしきり彼女からの流れが終わった後も、肉棒を膣から抜かず、無数のキスを彼女に降らせた。

・・・・・
・・・

がちゃっ……

僕は、ふらつく足取りで部屋のドアを開けた。照明が、黄色く見える。
結局あれから何回やっただろう? さすがに、四六時中のセックスが当たり前の世界だからか、彼女の性欲たるや凄まじかった。僕はしばらく、何も出ないところまで搾り取られてしまった。
「お疲れさまぁん♪」
「…………」
げっそりとした頭には、のんきなオカマさんの声に返す余裕はない。僕はソファーの上に崩れ落ちた。
「はあぁ……ほんっと、素敵だったわぁ……」
夢見心地の彼女の声。僕のかたわらに座り、頭を膝の上に乗せてくれる。なんだか、もっと眠くなってきた。

頭の上から、楽しそうな声がする。
「……この分だったら……」
「……そうね……みんなも……」
「……じゃあ早速……」
「……そうね。でも、アンタが……でしょ?」
「……そりゃそうよ……」
「ウフフフフフッ……」
「アハハハハッ……」

眠くて眠くて、どちらがどちらかは分からない。
ただ、くしゃくしゃに乱れた髪の毛を撫で続ける、細くて柔らかな手が、僕を深い眠りの中へ誘っていった……。

つづく

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