その他作品 柔らかな殺意 11 11.旅立ち 「課長、ちょっとお話があるんですけども、お時間、いただけますでしょうか?」 週明けの定時後。優人は課長の席へ行った。 「うん? いいけど……今でいいの? 何だったら、これからどこか外でも良いのよ」 「いえ。結構です」 ... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 10 10.記憶 街路樹の囁きが聞こえる、穏やかな春の日。私は、足取りも軽く、あの屋敷へ向かっていた。新聞のアルバイト情報欄で、『メイド募集』の記事を見たからだ。『誰かのために尽くせる』それが、私には何より嬉しかった。 私は、兄さんの喜ぶ顔... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 9 9.襲撃 「!!」 散らしていた意識を瞬時にかき集め、立てかけていた『常世渡り』を握る。 『扉の外だ。私たちがここにいるのは解っているようだが……そのまま動かん。妙だな……。どうする? 先手を打つか?』 束を伝わって、緊迫した声が頭... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 8 8.約束 ……静は目を開けた。 打ちっ放しのコンクリート、チリチリと瞬く蛍光灯。パイプベッド、緩められた服……。そんなことは全く意に介さない。顔を巡らせる。―傍らに『彼』が座っている。さっき聞いた、『彼』の去り際の言葉が、頭にこだます... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 7 7.夢 静をしっかりと抱きしめ、暖かさを確かめる。やげて、大きく視界が歪み、真っ白になっていく。……次の瞬間、二人は、下水道の中、自分たちが出てきた43番出口近くの通路に居た。 「助かりましたよ……。長年あなたを使ってます... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 6 6.翁 『黒澤様』 屋敷内の奥まった一室。闇色の光の中、淡々とした声が響く。 「……なんだ?」 その声に、先ほどまで眠っていた老人が、ゆったりと目を覚ます。 『お客様が、お見えです』 先ほどと同じく、合成されたような声が返ってく... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 5 5.潜入 「寒いね……」 「えぇ……」 コツコツと言う足音が、眼下の闇に吸い込まれていく。 空調でも効いているのだろうか、足下から冷たい風が吹き抜ける。 そして、何段ぐらい降りたのだろう。横幅が狭いことと、段差がきついこと、さらに... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 4 4.遭遇 “コツ……コツ……コツ……” 1メートルほど下の段差には、真っ黒な排水が流れている。ごぅっ……と言う音とともに、強烈な臭いがたち込める。優人は、コートの裾や、袖口を少し気にしながら、足下をペンライトで照らしつつ、そ... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 3 3.回想 店のさらに地下。階段を下りきったところに、両側に鉄のドアが並ぶ通路がある。そのうちの一室の前で立ち止まり、持っている鍵でドアを開ける。 手探りで入れるスイッチ。素っ気ない蛍光灯が照らす室内。内装は皆無に等しい。打ちっ放しのコ... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意
その他作品 柔らかな殺意 2 2.『仕事』 優人の勤めるオフィスから、5分ほどしか離れていない飲食街。昼は食事を摂りに来るサラリーマンでごった返し、夜は夜でまた賑わう。 そんな一角の地下に、その喫茶店はあった。 『Cafe U.U.』 階段のそばには、西洋風の... 2019.05.10 その他作品柔らかな殺意