影縫光(かげぬうひかり)~幻影・裏面 2

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2. 楽しみ

 『性』と言う物を意識し始める年になると、その我慢が、はっきりと『快感』になっていくことを認識しました。
 しかし、大きい方をあまり我慢しすぎると体に悪いと言うことも解ってきたので、小さい方で「楽しむ」事にしました。
 例えば、家を出る前にたくさんお茶を飲んだり、登校途中でジュースを飲んだり……そして、始業してから、一時限目は我慢するのです。授業中、不定期に襲ってくる尿意が私をなぶります。そして、頭の中が真っ白になった頃、先生に頼んで、授業中にトイレに行かせて貰うのです。
 休憩時間まで我慢してもいいのですが、もう一つ別の「楽しみ」のため、敢えて授業中に行くことにしています。

 ……全神経を尿意との闘いに使ったのです。視界が歪み、足腰はふらつき、壁にもたれ掛かるようにして歩きます。そして襲ってくる、言い様のない吐き気。さらに、我慢している尿が、指先の細かな血管の一本一本にまで流れていくのではないかという錯覚。
 でも、トイレが近くなるにつれ、どうしようもなく胸が高鳴るのです。

 壁一枚隔てて授業中だという背徳感。
 下着をびしょびしょにしてなお、意に反して漏れしたたる私の汗ともおしっこともつかない液体。
 それらは太ももを伝って流れ落ち、まるで軟体動物が這った後のように、私の後に光る筋を作っています。

「(今、この瞬間、たとえば火事や地震が起こって警報が鳴り響いたらどうなるだろう……私のいる廊下にどっと皆が逃げ出して来たら……?)」

 自らを戒めるように、また、今私を襲っている聞き分けのない苦痛をあおるように、わざとそんな事を考えます。

『ヂリリリリリリリリリィィィッ!!』

 私の鼓膜を破るように、ベルの音が頭の中で鳴り響きました。

 その瞬間に、私の身体は忌わしい排泄物の意志に乗っ取られます。

「あ…………あ…………あぁ…………っ……!」

 体中に流された電気が一点に集まるように、耐えようのない苦痛を伴ってそれは私の膀胱に集中します。
 思わず廊下に膝をつき、肺が破裂しそうな勢いで、私は音にならない声を絞り出します。
 がやがやと飛び交う皆の声、椅子や扉がたてる不快なノイズ……
 はじけるように教室から、みんなが廊下へ逃げ出して来ました。

 避難する彼等の行動は、私の中の熱いオシッコが持つ願望そのものです。
 ガクガクと震える膝から伝わる振動が、私のもう一つの遺伝子に新たな命令を与えました。
 ひくひくとけいれんするような数瞬の抵抗の後、まるで水風船をはじけさせるように、私の股間から液体がほとばしり出ます。
「あぅうっ!! ……あ……あ…………あは………………」
 永遠にも思われる長い放出の中、私の事をちらちらと横目で眺めながら、みんなが非常口に向かって逃げてゆきます。
 汚物を見るような視線を感じながら、私はいつも以上に満ち足りた気分で、股間から溢れ出る体液を心地よく感じていました……

『ビクッ!!』

 遠くなった意識を奮い立たせるように、私の膀胱の痛みが訴えかけます。
 はっと辺りを見回すと、廊下には誰もいません。
 少しの間だけ、私は気を失っていたようです。
 きっと子供がおもらしをしてしまうのはこんな感じの時なのだろうと、白昼夢の中の現実を思い返しました。

 震える手で個室のドアを開けます。もどかしさは、スカートをたくし上げて下着を下ろすような、器用なことはさせてくれません。スカートごと脱いで、便座にかがみます。
 そして…………心の中で、指をパチン! と鳴らし…………すさまじい勢いで、尿が便器の中へ吸い込まれていきます。

 その時の私は

「あがぁあぁ……ぐっ……かひっ……くはっ……かっ……ふ……おごっ……ほぉぉ…………」

目はあらぬ方向を向き、だらしなく開けた口からは一筋の涎を流し、腰をくねらせ、莫迦(ばか)のような姿でいるのです。
 しかし、それは何にも代え難い、最高の一瞬でした。

 びくんっ……

と躯が震え、最後まで残っていた尿が出ていくと、しばしの虚脱の後、私は紙を持たずに股間に手をやります。

 にちゃり……

 今し方出ていった尿の温かさと、別の分泌物の温かさが、手に伝わります。
 ぬるり……と少し手にすくった後、それを口に運びます。
涎の溜まったままの口に、別の粘液と尿にまみれた指を一杯にほおばり、あたかもおっぱいのように、ちゅうちゅうとしゃぶるのです。
 その時の私の顔は、それこそきっと、うっとりとした赤ん坊のような顔をしていることでしょう。一方で、空いている手は、アソコを一心に擦っています。

「んんっ! んぐっ! んむっ! ふぅぅ……んふぅっ!」

 自らの作り出した息苦しさと、押し寄せる快感の波に、私は、えも言われぬ恍惚を感じるのでした。

「んぐっんぐっんぐっ!! ふむっ!! んんっ!!!!」

 飢えた獣か何かのように、指をしゃぶり、凄い勢いで指と腰が動きます。
 ……絶頂を迎えるのに、さほどの時間は掛かりません。
 ですが、その一時は、私にとって永遠……そう、例えるならメビウスの輪の中に、私だけが居るような……そんな一時なのです。

 それから、再びの軽い虚脱の後、少し乱れた服を整え、軽く手を洗って、教室へ戻るのです。全く手を洗わないと、匂いがきつかったときに回りに怪しまれるからです。でも、完全に洗い落としてしまうには名残惜しい気もします。そこで、軽く手をすすぐだけにして、教室に帰ってからも、時々、自分で匂いを楽しむのです。
 ……もちろん、全く洗わないときもありますが。

つづく

 

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