幻影 2

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2.確信

 次の日。やっぱり昨日のこともあって、彼女のことが気になりだした。
 僕と彼女の席は離れていたけど、僕は遠目にずっと彼女の方を見ていた。
 友達と談笑する姿、真剣に授業を受ける姿……。どれも、昨日のあの顔とはかけ離れている。そう思い出すと、昨日の光景が思い出され、妙に恥ずかしくなって勝手に顔をそむけてしまう。
 あんまりずっと見ている僕が変だったのか、彼女の回りから僕の方に、ひそひそとした話し声が飛んできたが、それでも僕は彼女を見てしまっていた。

 そして、休み時間。チャイムが鳴ると同時に僕の足は……何故か女子トイレに向いていた。さっきの授業が終わる寸前に、彼女がトイレに立ったからだ。

 何があると解っているわけでないのに、僕は早足で女子トイレまで歩いた。
『僕は何をしてるんだ?』
 たどり着いた扉の前で立ち尽くし、僕は自問した。昨日のような光景が再びあるとは限らない。でも、『何か』があるという奇妙な確信だけがあった。

 ……はたして、彼女が出てきた。
『あぁ……』
 僕は……何かが崩れていく失望感と、やっぱりそうだったのか、という確信を得た満足感が同居する、視界が歪むほどの奇妙な感覚にとらわれてしまった。

 ……彼女は恍惚とした表情を浮かべていた。スカートから伸びる脚には、昨日と同じ、やけに輝いて見える幾本かの雫の筋があった。そして彼女は……かすかに濡れている指先の臭いを密かに嗅ぎ、更に恍惚とした表情になっていたのだ……。

 彼女の指を濡らしていた物が何かはすぐに解った。彼女が昨日と同じように僕に気づく風もなく、そばを通り過ぎていく時、確かに臭った。
 それは、紛れもない、おしっこの臭いだった。

 僕は女子トイレの扉の前にずっと立っていた。呆けた顔で、後から来た別の女の子たちの、いぶかしむ声さえ耳に入らず、ただ、立ち尽くしていた。

つづく

 

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