3.共鳴
そんな夢に起こされたのですから、その日はいつにも増して憂鬱な気分で学校へ行きました。
今まであんな怖い夢、いえ、怖いけど懐かしさもあって……でもやっぱり怖い夢……見たこと有りません。
何がなんだかさっぱり解らず、自分が今何をしているのかさえ上の空で、教室に入りました。
学校って、嫌いです。
みんなどうして、そんなに騒げるんだろう。
他愛のない話をして、先生をけなして、また笑って……。
誰か話す相手が欲しくない訳じゃないけれど、そんな皆は嫌です。
だから、私には本当に友達と言える人は、いません。
話さない訳じゃないけれど、それはほとんど会話ではありません。会話に聞こえる独り言を毎日繰り返しているのです。それは「自分はクラスの中にいる」という事の確認の手段である以外は中身のない、とても虚しいものでした。
見るでもなく、ぐるっと教室を見渡します。ふと、ある人物に目が止まりました。
クラスで一番の優等生の子です。朝早くから参考書を読んでいます。
いつものことなのですが、その日は少し違っていました。今まではどことなく怖くて近寄り難かったのですが、今日はなんだか優しい顔でした。そして何より、本を読んでいる彼女の顔が、変に艶っぽかったのです。
私はその顔を見て、なぜか胸が高鳴りました。
「オナジカモシレナイ」
いつの間にか、呟いていました。
「……え? 何が??」
また突然、思いがけぬ自分の言葉に戸惑います。
釈然としないまま、始業のベルが鳴りました……。
その日、学校から帰り、疲れた体をベッドに横たえていた時のことです。
ふと、今朝の彼女の顔が脳裏によみがえりました。
……いつものような顔の下の、妙な艶っぽさ。
すました顔の下で、とんでもないことをしている様な、悪戯っぽい様な、照れた様な……そう。子供のような……。
子供……
「子供……か……」
ぼそりとひとりごち、今朝見た夢を思い出しました。
楽しそうな自分と両親、無邪気な笑い声……
「……っ……」
思い出すと何故か哀しくて、涙が一筋、こぼれます。
「あの頃に……戻れたらなぁ……」
涙の溜まった目で、呟きました。
気が付くと、少しうとうととしていたようでした。私は、軽い尿意で目覚めました。不自然な格好で眠っていたからでしょう。
「おトイレ……」
のそっと起きあがり、何気なくトイレへ立とうとしたときです。ふとまた、さっきの夢のことを思い出しました。
「赤ちゃんの頃は……オムツの中に全部してたんだなあ……」
そう呟くと、なぜだか無性にオムツが懐かしくなってきました。でも、オムツなんてしまい込んでしまって今すぐは出せません。でも、もう一度見たい……いや、自分にあてたい! 解らないけど、無性に当てたくてたまらない!
「そうだ!」
私はしばらく思案し、タオルと安全ピンで代用してみることにしました。
厚手のタオルを用意し、Tの字に広げます。ショーツを脱ぎ、ドキドキしながら腰を落としました。タオル独特のざらりとした感触が、アソコに伝わります。
「あはっ!!」
不思議な感覚が躯を突き抜けました。
ぷしゅっ!
と同時に我慢していたオシッコが、音を立てて吹き出しました。
しゅろしゅろしゅろしゅろしゅろ……
弓なる躯の下、どこまでも世界地図は大きく描けます。
普段ならば、後始末の事を考える物ですが、その時は排泄の快感の他に、「突飛な行動をしたこと」に、明らかに躯は震えていたのです。それは、悪戯をした後、「ざまぁみろ」と、舌を出す感覚に似ていました……。
結局、その後始末は、後でその場所にお茶をわざとこぼして、親にその旨を伝えごまかしました。そしてその晩、両親が寝静まったのを見計らい、押し入れの中から昔使っていたオムツを出してきたのです……。