2.悪夢
………夢を見ました。
私は遊園地を歩いていました。沢山の家族連れが、楽しそうにしています。
元気な子供達、振り回される親、はじける笑い声……
見ているだけでほほえましくなるような、そんな風景でした。
ふと、見覚えのある親子連れが歩いてきました。
両親の手に引かれて歩く小さな女の子……あれは……私?
そして手を引いているのは……おとうさん、おかあさん。
「あんな時代もあったんだなぁ……」
何だかひどく懐かしい気分になり、その横を通り過ぎようとしたときです。
「あっ!」
突然、私に似たその子が、私を指さして言いました。
何かと思い、私は自分自身を改めて見ます。
私は我が目を疑いました。
私は……丸裸で歩いていたのです。
「え……?! きゃぁっ!!」
それに気づき、私はうずくまりました。
しかし次の瞬間……
『あっ!!!!』
と言う和音と共に、遊園地にいる全ての人が、全員私を指さしました。
皆、私を凝視して、細い、しかし大量の視線の矢を射かけます。
信じられない、という顔で私を睨む、目、目、目……。
「……はぁぁっ……!!」
……私は緊張に耐えきれず、うずくまったままオシッコを漏らしてしまいました。
……周囲から来る『驚嘆』の矢は、『蔑視』というつぶてに変わり、なおも私に降り注ぎ、私を打ち据えます。
そして今度は、「ひそひそ……」「こそこそ……」という話し声が聞こえてきました。
聞きたくないと解っていても、耳に入ってきます。
『なにをやってるんだか……』
『いい年をして……』
『そんなことだからいつまで経っても……』
『勉強も……』
『まったく……』
「どうして……? どうしてそんな目で見るの? やめて……やめて……やめてよ……」
私は泣きじゃくり、必死につぶてを払おうとしました。
しかし、その見えないつぶての雨は止んでくれません。
「やめて……いや……いやだよ……いやあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
全身の力を込めて私は叫びました。
すると、すうっ……と景色が消え、私は暗闇の中で魂の抜けたように倒れてしまいました……。
……そこで目が覚めました。
夢の生々しさに顔を覆うと、涙でぐしゃぐしゃになっていました。
掛け布団も、きっと暴れてしまったのでしょう、全然違うところへ蹴飛ばしています。
そして……やっぱりもう一枚、敷き布団のキャンバスに、世界地図を描いていました。