1.抑圧
「ひゃっ!」
ひんやりする感触に私は跳び起きた。
ぐっしょり濡れたパジャマに、布団に描かれた世界地図……
「あ……またやっちゃったのか……」
高校生にもなっておねしょなんて、情けない……
私は朝から、それこそ今の布団のように湿っぽい気分になってしまいました。
どういう訳か、私はその……おシモが弱いようなのです。おねしょをしたのだって、今日が初めてではありません。
寝る前におトイレに行っても、水分をなるべく取らないようにしても、何故か一向に良くなりません。
だから、ときどき大人用の吸水パンツを付けているのですが、格好悪いし情けないので、しないときもあります。
ですがそう言うときに限って、何かの拍子にちょっと漏れちゃったり、寝るとおねしょをするのです。
特に最近は多いのです。布団類は、親には内緒で、帰ってから自分で洗濯しています。
・ ・ ・
「なんなの、このあいだの英語のテスト! あんな点数じゃ、この先やっていけないわよ! これからの社会は英語が絶対に……」
その日の晩、もう日課みたいになっているおかあさんのお小言が始まった。
……同じ事を何度も何度も……
……一生懸命やってるのに、どうしてそんな事言うの?
……もっとがんばれって、どういう風に?
……わかんないよ……わかんない。
あーあ……帰りたいなぁ……
………え?
「帰る」って、どこへ?
今の言葉、……私?
言ったような……言ってないような。
変だなぁ、疲れてるのかな?
寝室へ帰ってからも、さっきの言葉が気になって仕方有りませんでした。
「帰りたい……? どこへ……?」
何度も何度も反すうしてみましたが、わかりません。
勉強をしようとしても、その言葉が頭の中をぐるぐる回って、手につきません。
きっと疲れているんだ、そう言い聞かせてその日は早々に眠ることにしました。