私とアタシ 2

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2.憧憬

それからしばらく経ちました。『あの日』の事をいまだにどこかで悔やみつつ、また、学校からの帰り道のことです。

いつも通る商店街の、薬局の前に来たときです。
ふと、店先に置いてある、紙おむつに目が止まりました。
いつもは気にも留めないのに……
「…………?」
不意に、尿意が襲ってきました。途中でジュースを飲んだ訳でもなく、躯が冷えたわけでもありません。家まではまだ距離があり、我慢できません。
仕方なく、近くの公園にあるトイレに駆け込むことにしました。

どこでもそうだとは思いますが、公園の公衆便所とは汚く、臭い物です。
でも、贅沢は言っていられません。急いで用を足したのですが、終わった後、なんだか変な気分になりました。

いつも嫌なはずのアンモニアの臭いが、なんだかとても甘い、懐かしいような匂いに思えてきたのです。
そしてまた、あの音と、声が、聞こえてきました。

キュイィィィン……

『ほぉら……懐かしいだろ? 切ないだろう? ……戻りたいだろう?』

ドックン!! ドックン!!

また心臓が早鐘になり、ぼうっ……と躯が熱くなりました。
そして手が……その熱さの中心、股間へのびていきました。

私だって、性の知識がない訳ではありません。きちんと自分の躯の仕組みも知っています。それに……一人で慰めるときだって有ります。
でもこんなところで、こんな……公衆便所の中でなんて!
想像するしない以前の問題です。少なくとも、『私』の考えることではありません。
……でもどうしようもありません。ここの匂いが、熱くなった躯が、手をせき立てるのです。

そこに手をやると、既に熱くなっていました。手でこね回すと、いやらしい音が鳴り、また私を興奮させます。

……家でするときはこんなに……そう思いながら、声を押し殺し、私は行為に没頭しました。

「……………………ッ!!!!」
達した後、余韻に浸る私は、落書きだらけの壁に向かって呟きました。
「貴女は……誰なの? ……いつも……私を……嗤う……」
声が答えます。
『もう少ししたら、教えてあげる……うふふ……』
「いつ?」
『もうすぐ……さぁ、それよりもう少しだよ……』
「何が?」
『まあまあ……。アタシの言う通りにすれば良いんだ……』
そして私は、おぼつかない足取りで、ふらふらと家に帰りました。両親とも、仕事で居ません。

私は制服を脱ぎ、風呂場へ向かっていました。そして、父親のシェービングクリームとひげそりを持ち、中へ入りました。
『さぁ……大事なところを綺麗にしようね……』
声が囁きます。
「やらなきゃ……いけないんだ」
言われるまま、それが義務であるかのように、クリームをアソコに塗り、ひげそりを当て始めました。

ぞっ……ぞぞっ……ぞりっ……

今まで考えたことのないところの毛を、慎重に剃っていきます。

ぞり……ぞりっ……ぞっ……

……全て剃り終わり、つるつるになった自分のそこを見ると、なんだか、とてもいとおしく思えました。

『そらカワイクなった。さぁ、次はお出かけだよ……』
また、声に言われるまま、普段着に着替え、私は街へ出ました。

気が付くと、さっきの薬局の前にいました。
「あら、いらっしゃい」
顔馴染みの薬局のおばさんが挨拶します。
「あ……どうも」
生返事をして、私は……紙おむつと、ベビーパウダー、そしておむつカバーを買っていました。
「おむつなんてどうしたの?」
珍しそうにおばさんが訊きます。
「え? あ……あの……その……甥っ子が……」
ドキッとしながら、思わず嘘をついていました。私にはきょうだいも、勿論甥などもいません。

 私はおつりを貰うのももどかしく、逃げるように家に帰り、自分の部屋に行きました。
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