秘密の体育館

ニセ児童文学叢書
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「ゆきのちゃーん……遅れてごめん……! あたし、来たよぉ……! ゆきのちゃーん……」
放課後の体育館。ちーこちゃんは、自分を呼びだしたクラスメイトの名前を呼んでいました。
「あれぇ……?」
体育館には誰もいません。しん……と静まり返った、だだっ広い中に、自分の声がやけに大きくこだまします。ちーこちゃんは、バレー部の練習を見学するのに誘われたのですが……。
「……くちゅんっ!」
冬の夕方の体育館は、とても冷えます。でも、ちーこちゃんはブルマに半袖シャツの体操服姿でした。当然、寒くて寒くてどうしようもないのですが、事情があって急いできたので、着替える暇はなかったのでした。
「ゆーきーのーちゃー……ん……ううっ……」
もう一度、誰もいない空間に、その名前を呼んだときです。
「ちーこさん……」
突然、後ろから声がしました。
「ひゃんっ!」
驚いて振り向いた視線の先には、同い年にしてはやけに落ち着いた、髪の長い女の子……雪乃ちゃんが立っていました。ちーこちゃんと同じ体操服姿ですが、全く寒そうな気配を見せずに、しゃん、とそこに立っていました。
「あっ! 雪乃ちゃん! よかったぁ……ごめんね、遅くなって……」
「いいえ……良く来て下さいましたわね、ちーこさん……。嬉しゅうございますわ……」
やっと目的の娘に会えて、寒さに少し震える歯で笑顔を作るちーこちゃんに、雪乃ちゃんもにっこりと微笑み返すのでした。
「うん! でも……バレー部のみんな、いないよ? あたし、雪乃ちゃんに誘われて、見学に来たのに……?」
「ええ……そうですわ。だって、今日の部活はお休みですもの……」
「えっ? じゃあ、どうして……?」
「それはね……」さあ、なんだか変な雰囲気になってきました。
そもそも、今ここにどうしてこの二人がいるのか?
それは、今日の一時間目にさかのぼります……。
「走るのかなぁ……やだなぁ……」
「なんでこんなに寒い朝からマラソンなんだよ……」
「マラソン大会が近いからじゃないの?」クラス中が愚痴っぽくなっています。冬のとびきり寒い日、その一時間目の体育。この時期は耐寒マラソンと大体決まっています。体がまだ寝ぼけている一時間目。みんな嫌なのは当然です。
確かに走っているうちに体も温まりますが、やっぱり半袖と短パン、ないしはブルマーというのは寒いものです。ちーこちゃんも、ぶるぶる震えながら着替えを済ませました。「よーし、じゃあ男子は校舎の外周七周、女子は五周! よーい……スタート!」
準備運動でしっかり体をほぐし、ほんの少し体は中から暖まりましたが、それでも、外の空気がどんどん熱を奪っていきました。こういうときには、自分のショートカットの髪型さえ、恨めしく思えます。
「(さっ……さむっ……さむっ……い……よぉ……えーん……)」
ちーこちゃんの心の声は、きっとその時のみんなの声だったでしょう。
それでも、走らないことには終わりません。一生懸命走りました。
(たっ たっ たっ たっ た……)
「(あ……っ!! やっ……やだぁっ……!!)」
二周ほどした頃でしょうか。ちーこちゃんは焦り始めました。
おしっこがしたくなったのです。
こんなに寒い日のマラソンですから、多くのみんなは、前もってトイレを済ませます。ですが、女の子は順番待ちが多くて、ちーこちゃんはあきらめざるを得なかったのでした。『一生懸命走れば、すぐだもん。大丈夫だよね』と思っていたのですが……どうやら、北風さんをあなどっていたようでした。
「(どっ……どっ……どうしよう……)」
いったん気になり出すと、もう止まりません。『寒い』とか『疲れた』よりも、『おしっこしたい!』が気持ちの多くを占めるようになります。
今自分がいるのは、外周コースの丁度半分ぐらい。校門まで戻る余裕は、残念ながらなさそうです。
「(もう……こうなったら……どこか……どこかで……)」
必死に視線を巡らせ、ふと、そばの田んぼ、古ぼけた物置小屋が目に入りました。
「(あそこの陰なら……誰にも見えない……よね……きっと……)」
ちーこちゃんは進路をじわじわと変えながら、前後を見渡しました。
……遅れ気味なのが良いことなのかどうなのか、ちーこちゃんの前後には、人影は見あたりませんでした。
「(よしっ……!)」
そうして、ちーこちゃんはその物置小屋の陰へ入っていったのです。
「もっちゃう……もっちゃうよぉぉ……!」
慌てていて、なかなかブルマが脱げません。やっとの思いでずりおろし、ちーこちゃんはようやくガマンすることを止めました。

(しゅしゅしゅしゅしゅぅぅ…………)

「ふはぁぁ…………」
ガマンしていたせいでしょうか、おしっこはとても勢い良く出ます。
白い湯気をもうもうと立てて、染み込みきれない分が、足下に水たまりを作って……なんだか、見ていて面白くさえなってくる光景でした。

ところが……
「あーっ!! 鮎川がこんなところでションベンしてるぞぉ!!」
「えっ?!」
背後からの声に振り向くと、そこには、二人の男子が立っていました。恐らく、同じ場所でさぼっていたのでしょう。
「やーい、やーい! 女の野ションだ!!」
「鮎川ヘンタイだ! 『ろしゅつきょう』だ!」
口々に男の子達ははやし立てます。
「ふ……ふえっ……」
ちーこちゃんは大粒の涙を流して泣き始めました。それでも残酷なことに、たまっていたおしっこは、なかなか止まってくれません。
「言ってやろ、言ってやろ! クラスのみんなに言ってやろ!!」
「鮎川ヘンタイ! ロシュツキョウ! やーい!」
「うっ……うえっ……ふええ……っ」
ちーこちゃんは、
『このままおしっこと一緒に、あたしも溶けちゃいたい……!』
心の底から思っていました。
その時です。
「あなた達! そこで何をしてるんです?!」
一際通る、びしっ! っとした声がしました。
「あん?」
「誰だ?!」
「……ふえっ……?」
みんながいっせいに振り向いた先には、ちーこちゃんと同じ体操服を着た、ちょっと目つきの鋭い、髪の長い女の子が立っていました。
「なんだよ姫神ぃ!」
男の子の一人が彼女に訊きます。返して彼女は、
「そこで、鮎川さんに何をしていたのか、と訊いているのです!」
強い口調で言いました。思わず気圧されたその男子の代わりに、もう一人が応えます。
「おもしれーぞ! 鮎川が野ションベンしてたんだ! さては姫神も連れションにきたのか? へへっ!」
「(……?!)」
涙目でその彼女……姫神さんと男子を交互に見ていたちーこちゃんでしたが、姫神さんの雰囲気が変わったことに気づき、少し怖くなってきました。
それはもう、すっかりおしっこは出終わったのに、立ち上がってブルマを上げ忘れる程に。

「許せませんわ……! 覚悟なさい……!」
恐ろしいほどに姫神さんの目つきが鋭くなったかと思うと……

「はぁぁ…………っ!!」

姫神さんの、そんな声がして、何か構えを取って……

(ピカッ! ドカバキビシバシボスッ!)

一瞬の眩しい光があったかと思うと……男の子達は倒れていました。
「うっ……うぐぁっ……?!」
「ぐ……えっ……」
もちろん、男の子達も何が起こったのが分からないままです。
ただ、地面にはいつくばって、うめくばかり。
「滅殺……ですわ……」
そうつぶやいて、姫神さんは、にやり……と微笑みました。
「ふ……ふわっ……?!」
全く突然の出来事に、ちーこちゃんは相変わらずしゃがんだまま、目をぱちくりさせていました。そこへ、姫神さんがにっこり笑ってやって来ました。
「もう大丈夫ですわ、鮎川さん……。愚か者共は、わたくしの家に伝わる『姫神空手(きしんからて)』で、完膚無きまでに叩き伏せました……一週間は、食事もできないでしょう……」
手を差し伸べられたちーこちゃんでしたが……
「ふぁっ……」
そのまま、こてん! とひっくり返って、気を失ってしまいました……。



「……あれ?」
「気がつきまして?」
もう一度気がついたときには、ちーこちゃんは保健室のベッドに寝ていました。側には、にこにこと微笑む姫神さんの顔があります。
「あの、あたし……? マラソン中に……?」
なんだか、ものすごいことがあったような気がするのですが、頭がぼんやりして思い出せません。
「無理はなさらない方がよろしくってよ……。もう少し、寝ていらっしゃいな」
首をかしげながら起きあがろうとするちーこちゃんに、姫神さんが言いました。
「なんか……すごく危ないところを姫神さんに助けて貰ったような気がするんだけど……あたし、思い出せないの……ごめんね、姫神さん……」
しゅん、となるちーこちゃん。そこに、
「雪乃……」
「え?」
「雪乃。わたくしの下の名前ですわ。そう呼んで下さいな、鮎川さん……」
どきりとするような笑顔で見つめて言う、雪乃ちゃんの顔がありました。
「じゃっ……じゃあ、あたしも知子……ううん、『ちーこ』でいいよ。雪乃ちゃん」
おろおろするぐらいに顔を赤くして、ちーこちゃんは慌てて返しました。
「うふふ……じゃあ、そうさせていただきますわ。ちーこさん」
「あはっ……」
不思議と視線が落ち着きません。えーと、えーと……としばらく考えて、ようやくちーこちゃんは、一番訊きたかったことを雪乃ちゃんに言いました。
「……どうして助けてくれたの?」
「困っているクラスメイトを助けるのは、当然のことですわ」
「あっ……ありがとう……。あのっ! あたし、何がお返しがしたいんだけど、あたし、何にも持ってないし、何にも出来ないし……あの……その……」
雪乃ちゃんは、家がとってもお金持ちです。その上、勉強も運動も、何でも抜群にこなします。ちーこちゃんには、全部が違う次元に思えます。だから、なんにもできない自分が、恥ずかしくてどうしようもありませんでした。
「お礼なんてとんでもないですわ。ちーこさんの考えることではなくってよ……?」
「でもっ……でもぉ……」
困ったような顔の雪乃ちゃんを、ちーこちゃんは一生懸命見つめ返しました。何でも良いから、お礼がしたい! その一心でした。
「……分かりましたわ。でしたら、今日の放課後、体育館へ来て下さいます? わたくしが所属している、バレー部の練習がありますの。見学にいらしてくださいな」
「そんなことでいいの?」
きょとん、とした顔のちーこちゃんに、
「ええ。もちろん、無理に入部を勧めたりはしませんわ。ゆっくり、お話しいたしましょう?」
にっこりと目を細める雪乃ちゃんでした。……でも、その笑顔が普通とはちょっぴり違っていることには、ちーこちゃんは気がつきませんでした。

「うっ……うん! わかった! 必ず行くよ、雪乃ちゃん!」
不思議と、その目を見ていると、ちーこちゃんは、どきどきして体が熱くなるような気がします。どぎまぎしながら応えました。
「うふふ……ありがとう、ちーこさん。じゃ、もうしばらくお休みなさい。授業のことは、何も心配することはなくってよ……」
雪乃ちゃんはそう言うと、ふわり……とちーこちゃんの顔を両手で包み込みました。ちょっぴり冷たい感触が、熱くなった頬に、とてもはっきり分かりました。どんどん顔が近づいてきて、こつり、とぶつかるおでこの感触。大きな瞳に、真っ直ぐ見つめられて、甘い匂いの息が、鼻をくすぐります。
「おやすみなさい……」
「あ……?」
ちーこちゃんの頭は、どんどん真っ白になっていきました……。

・ ・ ・

「ん……うーん……」
うっすらと目を開くと、白い天井が見えました。
「えー……と……」
そこが保健室だと言うことを思い出すまで、数瞬かかったちーこちゃんでしたが、やがて、他のことも思い出してきました。
「ああっ!! 大変! 雪乃ちゃんとの約束!」
窓から射し込む日はすっかり傾き、赤い夕焼けも終わりかけになっています。
時計を見ます。もちろん、とっくに放課後です。部活も真っ最中かも知れません。
「どうしよう……」
途方に暮れたちーこちゃんでしたが、とりあえず行かなくちゃ! そう思って、ベッドから飛び出して、体育館に向かったのでした……。



場面を最初に戻しましょう。
部活がないのを知っていて、雪乃ちゃんは自分を呼びだした……それを知って、ちーこちゃんはそれがなぜだか、全く分かりませんでした。素直に訊き返します。
「じゃあ、どうして……?」
「うふふ……靴と靴下を脱いで、こっちへいらして……」
「えっ……? う……うん……?」
言われたとおり、靴と靴下を脱ぎます。床から、刺すような冷たさが駆け抜けました。でも、よく見ると、雪乃ちゃんも裸足です。それにしては、全く寒そうな素振りを見せません。不思議に思いながら、雪乃ちゃんはちーこちゃんの手を引いて、体育館の中央までやって来ました。
「あの……? きゃっ!!」
何をするつもりなのか、きょろきょろしていたちーこちゃんでしたが、急に後ろから抱きしめられて、心臓を直接つかまれたような声をあげてしまいました。
「ゆっ……雪乃ちゃん……?」
「うふふ……今宵は、ちーこさんに『儀式』への協力をお願いしようと思いましたの……それで、ここまで来ていただいたんですわ……」
「あっ……あっ……あっ……ぎ……儀式ぃ……?」
右手で胸の辺り、左手で下のお腹の辺りをさすられます。くすぐったいと言うよりも……なんだか、もっと撫でていてもらいたくなるような感触です。
力が抜けかけてきたところへ、雪乃ちゃんは囁くように言いました。
「『満月の暦、逢魔が刻。清く冷たき、板の間で、無垢なる乙女の、熱き汚れを捧げよ』」
「はっ……はふっ……えっ……? な……何それぇ……?」
撫でられ続けて、すっかり力が抜けたちーこちゃん。思わず床にへたりこんでしまいます。それでも、もっと撫でて欲しい……そう思って、雪乃ちゃんに体を預けていました。その耳に、ふうっ……と息を吹きかけ、雪乃ちゃんは続けました。
「……ある魔導書の一節ですわ。今宵、この場所で神を呼び出すのです」
「あっ……あうっ……この……格好……でぇ?」
もやの掛かったようなちーこちゃんの頭の中に、マンガなんかでよく見る黒魔術のシーンが浮かびました。もっと暗い部屋に、魔法陣に、黒装束に……どう考えても、今のこの状況との共通点はあまりありません。そう思っていると……
「あんっ!」
きゅっ! と突然、おっぱいを強めにつかまれました。びっくりしたような、でも、もう一回やって欲しいような感覚が、体中を電気のように走ります。
ぶるぶると震えるちーこちゃん。その体をもう一度強く抱きしめて、雪乃ちゃんは言いました。
「この格好が必要なんですのよ……わたくしたちが呼び出す神、『デビ=ブル=マース』様のために……」
「でっ……でび、ぶる、まーす……?」
ちーこちゃんには、もう何がなんだか分かりません。ただ、撫でられ続けて、床の冷たさも気にならないぐらいに火照っている体の感触だけが、はっきりとわかっていました。
「ええ……後は、ここで『無垢なる乙女の熱き汚れ』ちーこさんのそそうを捧げれば、儀式が完成するのですわ……」
「そそう……?」
「ええ。つまり、ちーこさんの、おしっこですわ」
「ええーーっ!?」
「この場所、この格好でして下さいな。足は汚れないように、わたくしが抱えて差し上げますから……」
太股をすべすべと触りながら、にっこりという雪乃ちゃん。
「なっ……何かの……じょっ……冗談だよね? 雪乃ちゃん……? 儀式だとか、何とか……」
「………………」
引きつった笑顔を張り付けて言うちーこちゃんでしたが、雪乃ちゃんは、じっと肩越しに自分の顔を見つめるだけで、何も応えませんでした。
「ねえ、雪乃ちゃん……?」
ちーこちゃんは不安になってきました。確かに、雪乃ちゃんには危ないところを助けて貰って、すごく感謝してはいますが、それにしたって……いや、でも……
「ゆきの……ちゃん……ねえ? 全部うそだよね? からかってるだけだよね?」
だめで元々……の気持ちで訊いたちーこちゃん。
ですが、雪乃ちゃんの答えは……
「ええ、嘘ですわ……」
「はへ?」
「魔導書も、召還の儀式も、みんな嘘。でっちあげですわ……」
「よかった……でも、どうして……んうっ?!」
ちーこちゃんの言葉は、雪乃ちゃんの唇に遮られてしまいました。
「んっ……! んんっ……うむっ……」
「んふっ……ふふっ……」
(ちゅく……ちゅる……むちゅっ……)
ゼリーのように甘く、柔らかい唇の感触。
心臓が思い切りドキドキします。頭も真っ白になって、ぼうっ……としたところへ、雪乃ちゃんの舌が自分の口に入ってきました。舌を絡めると、それがとっても気持ちよくって、ちーこちゃんもお返しに、自分の舌を雪乃ちゃんの口に滑り込ませていました。
(じゅるっ……ずずっ……ちゅむっ……)
「うぐ……むぐ……ふうんっ……」
「はあっ……んぐっ……はふぅっ……」
二人とも、たくさんつばが溢れます。でも、お互い飲み干しあいました。
「はあっ……ちー……こ……さん……」
「あふっ……ゆきの……ちゃん……何……?」
たくさんの糸を引いて離れる唇。すっかり頭に血が上ったちーこちゃんに、雪乃ちゃんは悲しそうに言いました。
「許して下さい……ちーこさん……。本当はね……あなたと二人っきりになりたかっただけですの……」
「えっ……?」
「あのマラソンの時……あなたを助けたのは……もちろんクラスメイトだったからというのもありますわ。でもそれ以上に、あなたの……おしっこする姿があまりに可愛らしくて……ああ、その姿をわたくしだけの物にしたい……! そう思ったんですの……」
「…………」
「わたくし、昔から欲しい物は必ず手に入れてきましたわ。けれど……今回は後悔しています。こんなに卑怯な手……儀式は嘘ですけど、別の本で覚えた催眠の術……を使ってしまったことに……。でも、ちーこさん。あなたを可愛いと思ったこと、はっきり言ってしまえば好きになってしまったことは本当です! ごめんなさい……許して……下さい……ううっ……」
弱々しくそう言うと、雪乃ちゃんは、ぽろぽろと涙を流してすすり泣き始めました。
「雪乃ちゃん……」
「え……? あっ……!」
ちーこちゃんは体の向きを変え、雪乃ちゃんに、もう一度唇を重ねました。
いつもクラスではつんと澄ました感じで、近寄りにくかった雪乃ちゃん。
何でも出来て、先生も舌を巻くほどの天才少女。
そんな雪乃ちゃんの泣き顔を、ちーこちゃんは、とっても可愛いと思っていました。
あたしだけにこの泣き顔を見せてくれたのなら、とっても嬉しい。
あたしがこの泣き顔を消してあげられるのなら、そうしてあげたい……そう思いました。
「んー……っ……はあっ……どう? 雪乃ちゃん?」
「うふ……あ……っ ちーこさん……嬉しい……」
くしゃくしゃの泣き顔に笑顔を浮かべ、雪乃ちゃんはもう一度強く、ちーこちゃんを抱きしめました。
「ねえ、雪乃ちゃん……あたし、お願いがあるんだけど……」
雪乃ちゃんの柔らかな体の感触に、ちーこちゃんは、ぽうっとした口調で言いました。
「何ですか? ちーこさん……」
「あっ……あのね、さっきから雪乃ちゃんにいっぱいあちこち触ってもらって……そのぅ……くすぐったいんだけど、あの、なんだか気持ちよくって……だからえーっと……もっと……して欲しいなぁ……って……」
顔を真っ赤にして、ちーこちゃんはもじもじと言いました。この不思議な気持ちよさを、もっと感じたい……そう思っていたのです。
「分かりましたわ……。わたくしが、もっと良くして差し上げます……」

(ちゅっ……)

「んっ……」
もう一度軽く唇を合わせてから、最初の姿勢に戻る二人。
雪乃ちゃんは、ゆっくり、たっぷりとちーこちゃんを触り始めました。

(さわ……さわ……さわわ……ふにゅ……くにっ……)

「あっ……うんっ……はあふっ……」
胸をまさぐる、雪乃ちゃんの右手。触るだけでなく、時々力を込めて、おっぱいをつかみます。ブラジャー越しにちょっと形が変わるほど揉まれているはずなのですが、不思議と痛くはなく、じぃん……とした気持ちよさが、何度も何度も走るのでした。

(すべ……すべ……きちゅっ……くにゅっ……)

下半身を撫でている左手。太股から、ブルマに包まれた腰。ぷくりと膨れているお股の辺りを、雪乃ちゃんは重点的に揉み始めました。
「んあぁっ! そっ……そこぉ……っ!?」
「んふふ……どうしました?」
ふうっ、と耳に息を吹きかけ、雪乃ちゃんが訊きます。
「あのっ……すごく……しびれて……そのっ……! ああっ!」
「まあ……それは大変ですわ。もっとほぐして差し上げましょう……」

(きちゅ……きちゅっ……くにっ……むにぃっ……)

「あっ! あんっ! うあっ! 変……へんだよぉ……」
「変? どう変なんですか?」
ぺろぺろとちーこちゃんの耳をなめながら、再び雪乃ちゃんが訊きます。
でも、ちーこちゃんには、ぼんやりと遠くに聞こえました。
「漏れそう……何か……漏れそうなの……おしっこじゃなくて……じゅくじゅくしてるの……変だよぉ……」
「ちっとも変じゃありませんわ……」

(にゅるん!)

「はあんっ!」
雪乃ちゃんの左手の指が、ブルマの脇をくぐってちーこちゃんの中に滑り込んできました。くちゃり……という音が、はっきりとちーこちゃんにも聞こえます。
「そこっ……汚いよぉ……! 変なよだれみたいなのが出てるし……はうんっ!」

(つぷっ……にちゃちゃちゃっ……!)

「あぁあぁあぁーーっ?!」
大きな悲鳴を上げるちーこちゃん。それに構わず、雪乃ちゃんの指は、すっかりぬるぬるになったちーこちゃんの中を動き続けます。
「可愛い……なんて可愛いちーこさん……! もっと……もっと可愛くして上げますわ……」

(くちゅくちゅ……ぬちゅ……ぐちゅぅ……!)

「あっ! あうんっ!! ひっ……いいっ……それぇ……気持ち良いよお……! ゆきのちゃあん……! はああっ!」
がたがたと体を震わせて、ちーこちゃんはすっかり雪乃ちゃんに身を任せていました。お股から溢れる『よだれのようなもの』は、どんどん出てきて、しっとりとブルマーをも濡らしていました。

(にちゃにちゃにちゃ……きゅっ! きゅきゅっ!!)

「はぐうぅんっ?!」
一際大きく、ちーこちゃんの体がこわばりました。
雪乃ちゃんの人差し指が、おしっこの出口をさすり、親指が、その上の小さく膨れ上がった所を触ったからでした。
「あっ! ああっ! ゆっ! ゆきっ……ゆきっ……の……ちゃ……!」
「うふふ……」
「だめっ……あたしっ……! そこ……触ったら……! でっ……出ちゃう……!」
「あら、おつゆはもうたくさん出てますわよ?」
「ちがっ……ちがっ……うっ……あっ……んああっ! 違うの! おしっこ! おしっこ出ちゃうの!! ああんっ!!」
「出して下さい……ちーこさん……出せば、もっと気持ちよくなりますわ……」
「そっ……そっ……そんなぁ……あっ……! あひっ! うあぁんっ!」
「可愛らしいちーこさん……一番可愛い姿、わたくしに見せて下さいな……」
「はうっ!」
ちゅるん! とちーこちゃんの中から指を引き抜き、そのヒザを内側から抱えるように持ち上げる雪乃ちゃん。まるで、小さな子供がお母さんにおしっこをさせて貰うようなポーズです。
「さ……どうぞ、ちーこさん……ほら……」

(ぷに……くりくりっ……)

雪乃ちゃんが、ブルマの上から、小さな豆のように膨れ上がった部分と、おしっこの穴を押しました。そのまま、指をねじ込むように回します。
「あっ……! だめぇっ! やっ……やあっ……出ちゃう……出ちゃうよぉ……! たすけて……ゆきのちゃぁん……!!」
雪乃ちゃんはちーこちゃんの助けを聞かず、とどめを刺すように、二本の指で小さな膨らみをつまみました。

(きゅっ!)

すると……

「あっ! あっ!! ああっ! うあっ! はぁぁぁーーーー……ん!!」

(じゅわじゅわじゅわじゅわ……)

勢い良くブルマを突き抜けてあふれ出す、ちーこちゃんのおしっこ。
ほこほことした湯気を立てながら、体育館の床に広がっていきます。

「あっ! あっ!! あふっ! んっ! んあぁっ……!」
ちーこちゃんは、普通におトイレでおしっこするときとは全然違う、ものすごい気持ちよさに襲われていました。
おしっこと一緒に体の中の全部が抜けていくような、そんな感じでした。
「はっ……はっ……は……あっ……んっ……」
おしっこが全部出ていくと、ふうっ……と体が軽くなった気がしました。
足を下ろし、後ろの雪乃ちゃんに、余韻に震える体を預けます。
うっとりとした、雪乃ちゃんの声が聞こえました。
「最高でしたわ……ちーこさん……。わたくし今、とても幸せです……ちーこさんの、一番可愛い姿を見ることが出来て……本当に嬉しいですわ……」
「ゆきのちゃん……」
「でも……これっきりでしょうね……。こんなみだらなことをするわたくしは……ちーこさん、やっぱりお嫌いでしょう……?」
寂しそうにつぶやく雪乃ちゃんに、ちーこちゃんは言いました。
「ねえ……今度の日曜、雪乃ちゃんの家に遊びに行っていい?」
「えっ……?」
「今度は……もっとあったかいところでやろう? ね?」
「あっ……」
みるみるうちに、驚きと喜びに見開かれる、雪乃ちゃんの目。
ちーこちゃんは、いっぱいの微笑みで言いました。
「今度は、あたしが雪乃ちゃんの可愛い顔、見たいなぁ……」
「ちーこさん……!」
「うん! 雪乃ちゃん!」
そうして、もう一度唇を重ねる二人でした……。

-おしまい
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