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『中級立ちション講座』(4)

4.潮風の中の講義

 「(ゆーき!ゆーきぃぃぃっ!!)」
 渾身(こんしん)の力で俺は泳いだ。距離は二十メートルもない。すぐのはずだった。
 しかし、焦る気持ちが、力の伝わる効率をどんどん下げていく。掻き出すはずの手のひらは水を切り、蹴り進むはずの足は、いたずらに飛沫(しぶき)をたてるだけだった。
 それでも、無我夢中で泳いで、ようやく俺は、ゆーきの所までやって来た。
「俺につかまれ!」
 もがく体を抱き寄せながら叫ぶ。
「せ……んせ……!」
 俺の顔を見て安心したのか、しっかりとしがみついてきた。……良かった。間に合った。俺は、心底安堵し、泳ぎながら、ゆーきの肌の感触を何度も確かめていた。
 足場までは近かった。きっと、足が滑って深みにはまってしまったんだろう。……苔には注意しろって、言ったのに……。苦笑いしながら、俺はゆーきを抱えて、陸へ上がることにした。

「よいしょ……と」
 荷物を置いている岩まで戻り、ゆーきを下ろす。
「げほっ! げほげほっ……!!」
 海水を吐き出す背中をさすってやり、落ち着くのを待った。
 とたんに緊張の糸が切れ、どっとした虚脱感と共に、俺は大の字にひっくり返った。その時、
「うっ……ううっ……」
 そんな声が聞こえたかと思うと……
「うわぁぁぁーーーん! 怖かった! 怖かったよおぉぉーーっ!!」
 ゆーきは、俺に被さって、大きな声で泣き始めた。
「怖かった! 怖かった! 目の前が暗くて、夜みたいで……! 息ができなくて、また……また消えるんじゃないかと思って、ボク……ボク……!! 先生だよね、本当に、先生だよね?!」
 大粒の涙をぼろぼろ流し、俺の存在を確かめるように体を押しつけながら、ゆーきは泣いた。
 俺は、くしゃくしゃに濡れた髪を整えるように優しく撫でながら、ただ、泣くに任せていた。

 ゆーきは、夜が怖い。理由は、彼女がまだ、ちゃんとした人間になる前、思念というあいまいな存在だった頃にさかのぼる。その頃の彼女は、『あいまいな時間』……つまり、黄昏の逢魔が時か、朝焼けの、ごく限られた時間にしか、出てくることができなかった。完全な夜、完全な朝になってしまえば、いることができなかった。消えるたびに、悔しくて、悲しくて……仕方なかった。特に、光が無くなっていく夜は、このままもうこちら……現世……に来られないんじゃないかと、怖くてどうしようもなかったそうだ。

「うっ……うぐっ……ふえっ……ん……」
 ゆーきはなかなか泣きやまなかった。俺は……
「……んうっ?!」
 ゆーきの顔を引き寄せ、そっと、唇を重ねた。海に奪われた温かさを取り戻すために。そして、俺の存在を、確かめさせるために……。
「ふぅ……ん……んむっ……」
 小さな舌が、口の中へ伸びてきた。それは、助けを求めるように小さく震え、俺を捜していた。
「ん……」
 俺も、それに応える。口の中、もう一つの抱擁を交わしてから、俺は、さらに舌をうごめかせた。ゆーきの口を、呼吸をなぶった憎い海水を、残らず嘗め取るように、俺の舌は、隅々を拭った。

(くちゃ……くちゃ……)

「ふぐっ……ごくっ……」
 音を立てて、互いの唾液を飲み干し合う。潮気を含んだ物は全て、俺が、引き受けた。
 行き場を求めて暴れ回っていた鼓動は、俺の体に吸い込まれ、やがて、テンポは速いが、穏やかなそれに変わっていった。
「うふう……」
 何本もの銀色の糸を引いて、唇が離れる。
「俺は、ここにいるぜ……」
「…………せんせ……」
ゆったり、そしてはっきりと言った俺に、泣きはらした目をとろりと潤ませ、とさり……と、ゆーきは俺に体を預けてきた。
 ……そして次の瞬間には、安心したのだろうか、すうすうと寝息を立てていた。
 俺は、穏やかに上下するその小さな背中を、ぽん……ぽん……と叩きながら、しばらく、そのままでいてやった。

 憎いと思った海から、まるで詫びるように、柔らかな潮風と、澄んだ波の音がやってくる。俺は、果てしなく蒼く突き抜けゆく夏空に深く飛び込み、その中でしばし、ぼんやりとしていた。

 どのぐらい経っただろう。ふと、

(ひゅうっ……)

 強めの潮風が吹いた。日差しに焦がされて、肌は乾いているが、それでも少し寒いな……と思った。すると……
「んんっ……」
 ゆーきが目を覚ました。もそもそと、俺の上で身じろぎする。俺の顔を確認し、変わらず、うっとりとした笑顔を向けてくる。そして、ちょっと恥ずかしそうに言った。
「せんせ……おしっこ……したい……」

 最初の『教え方』が悪かったのか、それとも、神様の悪戯か、ゆーきの中では、『立ちション』へのこだわり以上に、『おしっこ』と、『性的興奮』は、強く結びついている。ま、かく言う俺も、ゆーきのそういう姿に、同じようになってしまった……のだが。
 恥ずかしそうに顔を赤らめて言うときは、『そっち』のサインだ。この顔に、俺の頭はいつも正しく痺れてしまう。他の言葉で言い表せない、己のボキャブラリーの貧困さが悔やまれるが、とにかく可愛いのだ。特に今は、さっき、思い切りキスしたところだ。すでに思考には、部分麻酔が掛かっている。そこに、この顔だ。思い切り濃い全身麻酔を掛けられたみたいなものだ。

(どくん……どくん……)

 思考に麻酔が行き渡ると同時に、体の中のあらゆる分泌物が、全身を巡る。やがて、体の奥底の芯に、とびきり熱い灯がともる。
 そして俺は、
「んっ……」
 ゆーきの顔を引き寄せ、再び、口づけをした。さっきと違って、軽く、短く……。
「ここじゃやりにくいな。海に……入ろうぜ」
「うん……」
 ゆっくりと再び海に入り、岩の浅瀬に立つ。……もちろん今度は、足を滑らせたりしないように、ごく近いところにした。

「…………」
「…………」
 しばし、見つめ合う。お互いの瞳の中に、ちろちろと揺らめく、小さな炎が見える気がした。
「せんせい……」
「ゆーき…………」
 三度の口づけ。今度はお互い、強く抱き合う。そのまま……
「んむっ……ん……あっ……!」
 俺の太股当たりに、暖かな海水よりもなお熱い感覚が吹き付けた。ゆーきの腰に回した俺の手が、ぴくり……ぴくり……と、微かな震えを感じ取る。少し細い、しかし白く柔らかな太ももが、まるで別の生き物のように俺の下半身に絡まり、熱い流れの生まれ出た源を、一心に擦りつけてくる。
 俺の体内の分泌物は、最高速で体を駆けめぐり、一つ所に終着を求めた。

 理性の最後の鍵がはずれる前、ゴミほどにしぶとく残っていた思考が、立っている場所の危なさを言ってきた。そうだ。ここだと、また転んだりしかねない。俺は、すぐそばにあった、ちょうど良い大きさと高さの岩に、体をずらして座った。それと同時に、理性の鍵は音を立ててはずれ、俺の中のゴミは、潮風に綺麗に飛ばされた。

「あんっ……!」
 回した手を、水着の中、小さな尻にずらす。強く握ればつぶれそうなそれを、ゆっくり、こねるように揉む。水で冷えた皮膚に、内側から、熱がこもってくるのが分かった。
「あっ……あぁっ……! んっ……!」
 甘い声が耳元でする。俺はさらに、右手の指を、尻の割れ目の中へ滑らせた。すぐに、ぬるり……とした感覚が伝わる。さっきの時点で、もう相当興奮しているのだ。指も、あっけなく入る。動かすと、

(くちゃ……ぴちゃ……)

 はっきりとした、水っぽい音がする。

(ぷちゅっ……くちゅ……ちゅっ……ちゅぴっ……)

「あ……あぁっ……! んふぁ……ひぃっ……」
 腰もひくひくと動き、熱いヒダが、指にからみついてくる。
「ひあっ……ん……くっ……っひん……」
 切なそうな声を上げ、許しを請うように、俺の唇をむさぼりに来るゆーき。
 が、請われれば請われるほど、もっといじめたくなる。俺は、まだ尻を揉んでいた左手をも滑り込ませ、右手の指が暴れる穴のすぐ上、小さな泉の発生源を探らせた。

(ぷにゅっ……)

「んひいっ!!」
 そう。固執する場所とは、すなわち弱点。ここが、ゆーきのそれなのだ。下の穴から蜜を分けて貰い、指先で、円を描くようにゆっくりとなぞっていく。もちろん、右手も休んでいない。容赦なく中をかき回す。

(くちゃっ! ぷちゅっ! にゅぷっ! ちゅぴっ!)

「あぁーーっ! あんっ! あんっ!! はっ! あぁっ!!」
 ガクガクとゆーきの体が震える。暴れ回る腰を押さえつけ、なおも責める。
「やっ! あっ! せっ……せんせ! ああっ! だめっ……だよぉっ! ボクっ……あんっ! きもち……よすぎ……る……よぉ……ぅぁあっ!!」
「カワイイぜ、ゆーき……」

(ぐちゅうっ!)

「あぐぅっ!!」
 さらに指を深く入れる。中の指は、したたる蜜でぐっしょり濡れている。

「ーーーっぁっ、ーーーーっっくぅ……」
 声がか細く、小さくなってきた。……早いな……。
 仕上げに、暴れる右手の親指で、すっかり膨れ上がっている、小さな芽をこする。そして左手は、尿道の上に円を描く早さをどんどん上げていく。やがて……
「あんっ……うっ……んっ……ぅあーーーっっ!!」
 細い、絞り出すような声を長く上げて、ゆーきは果てた。ひととき、体がこわばった後、くたり……と脱力する。

「はあっ……はあぁっ……んっ……うふうっ……」
「…………」
 荒い息をつき続けるゆーきの顔を見ると、もっともっといじめたい気持ちが、俺の中で、グルグルと激しく渦を巻く。微笑みすら浮かんでくる程だ。
 ゆーきは達した。だが、俺はまだだ。
「まだ……終わってないぜ……」
「え……?」
 唇の端をゆがめて言う俺に、夢見心地の声が被さる。その声もすぐに、
「あ……そんな……」
 困ったような声になる。火照りきって、沈静を望む場所にあてがわれた、さらに熱い塊の感触を感じたからだ。
 しかし俺は、
「だぁーめ……」
 言うが早いか、

(ずぶずぶずぶ……)

 待ちきれずに暴発寸前だったそいつを、望みの場所へ沈めていった。
「うあっ! うああっ! んあぁぁーーーっ」
 お互い、熱くて、熱くて、感覚もあいまいだ。だが、確かにゆーきのヒダは、俺を激しく迎え入れた。

(ぎり……ぎり……ぐい……ぐい……)

 締め付けられる血管に、意識すら朦朧(もうろう)とするようだ。それでも、突き返すたびに、
「んあぁぁっ! そんっ……だっ……めっ……だよっ……! んうぅっ……!!」
 言葉にならない音を発しながらも、その腰が激しく動き、俺のアレを引きちぎろうとするほどだった。

(ずっ! ずずっ! ぐっ! ぶちゅっ!)

「あっ! あふっ! んっ! あぐっ! いっ! ひいっ!」
 一度イッて、かなり敏感になっているところへの挿入だけに、反応も激しい。しかも、今回はこうなるまでの経緯が辛い物だったから、よけいに恋しいのだろう。そんなゆーきが、俺は可愛くてたまらなかった。

「くっ……うあっ……!」
 ……と、そういうことでも考えていないと、すぐにでも俺がイッてしまいそうだった。それほど、ゆーきの中はきつく、熱く、腰の動きは激しかった。
「あんっ! あっ! はっ! いいっ! 気持ちいいよぉ! あっ! と……とまんない……! どうしよぉ……せんせぇ……とまんないよぉ……! ああっ! 怖い……ボク、怖い……!」
 ゆーきは、半分べそをかいた顔で俺を見つめる。
 快感に振り回されているような自分が、恐ろしいようだった。
「んっ……! ゆっ……ゆーきぃ……」
「あっ! あうっ! んっ! んんっ……」
 俺は、不安な言葉を言うゆーきの唇を、自分の唇で塞いだ。
 その目を、じっと見据えて囁く。
「大丈夫だ。何も怖がらなくていい……。たくさん……気持ちよくなって……いいんだよ、ゆーき……」
「はぁっ……はふっ……んっ……ほ……ホントに? せんせ、怒らない?」
「ああ。誰が怒ったりするもんか。逆に、俺はゆーきのそういう顔が、もっと見たいんだ……」
「せんせ……!」
「一緒に気持ちよくなろう? な?」
「……うんっ! あっ……あぁんっ……! んっ……! はっ……!! ああっ……!」

(ぷちゅっ……くちゅっ……ちゅぴっ……ぴちゅっ……)

 再び、腰を動かし始めるゆーき。しかし、そのテンポは安定した物になり、あえぎも、落ち着いた物になっていた。
 俺のアレにも、最初の荒っぽい快感ではなく、じんわりとした、何ともたまらない感触が覆い被さってくる。
「はぁふっ……! んっ……! くぅんっ……! はぁぁーーっ……ふぅーー……んっ……!」
 やがて、ゆーきの声が、深呼吸をするような物になる。
 二回目がもうすぐ、か。
 同時に俺も、限界を迎えつつある。
「せんせい……ボク……また……きちゃうよぉ……! いい? いいの?」
「ああ、いいぜ……! 俺も……そろそろ……来る……!」
「あんっ! あっ! くあぁっ!!」
 俺は、ゆーきの腰を持ち、最後に大きく自分から突き上げた。

(ぐちゅっ! ぐちゃっ! くちゅっ! ぴちゃっ!)

「く……あっ……! ゆーき……ゆーきぃぃっ!!」
「あっ……! せっ……せんせ……!! ううんっ! あっ……じゅ……ん……いち……さ……あーーーん!!」

(どくん……! どくん……!)

 激しく渦巻く想いが、ゆーきの中で、白く弾けた。