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付加疑問の酒

 少し前ですが、元同僚の“テレクラマスター”『自称・仏の』M氏、そして同僚悠煌(ユウファン)氏と、あるバーへ行きました。東京にもあるそうですが、店名を『Bar,isn’t it?』(バー・イズントイット?)と言います。訳すと、『バー、だよね?』と言ったところでしょうか。

 『だよね?』というと、そんなタイトルのラップ風の歌がありましたな。個人的にああいう歌はあまり好かんのですが、曲そのものよりも、当たったと見るや妙テケレンな別バージョンをワラワラ出した、制作者側の安直さが嫌でした。表現活動としてではなく、純然たる商業活動として笑顔で歌わねばならなかった歌手の心中はどんなだったでしょうか。もっとも、生粋の表現手段としての歌は、メジャーと呼ばれる物の中にはないのでしょうけども。閑話休題。

 さて、その『Bar,isn’t it?』、料理も酒も、種類を問わず全品500円というのが特徴で、しかもバーテンはほとんどが外国人。小洒落た、でも広々とした店内に、曲が増えるに従ってテンポアップするBGMなど、雑居ビルの一角にあるとは思えないおしゃれっぷりです。個人的には、メニューにシガー(葉巻。もちろん(?)500円)があったのが気になりました。そういえば海外では、嫌煙ムードが広がる代わりにシガーバー(葉巻を出すバー)がちょっとした人気を集めていると、何年か前の『ニューズウィーク』誌にありました。今の情勢は知りませんけど……。あ、そう言えば、『ニューズウィーク』の日本での発行元である『TBSブリタニカ』は、実はサントリーの子会社だと知って驚いた就職活動中のこと。ああ、また話がそれた。

 そんな中、M氏は言いました。

「ここ、ナンパスポットなんですよ。複数で来ている女性客は、まずそれ目的ですね」

 さすがM氏。客が増えるに従って、目つきが変わっていきます。『獲物を狙う狼のような目』あるいは『爛々(らんらん)と輝く目』とは、彼のことを言うのだろう、と、私はその時確信しました。私がバーボンの『フォアローゼズ』などなめいるかたわらで、M氏は嬉々として何組かの女性客に声を掛け、しきりに私たちにもアタックするように言うのでした。しかし、ナンパ経験値(たった今命名)のないウブな(どの口が言う)男二人、はぐらかすばかりでいっこうに動かないのでした。ちなみにメニューをよく見ると、『クイックファック』とか『セックス・オン・ザ・ビーチ』なんてぇセクシイな名前のカクテルがあったりしてかなりドキドキしたんですが……男が一人で飲むもんじゃないだろう。ということで、それは見送りました。手持ちの本には……レシピはなかったように思います。(^-^;

 はてさて、実は話の本題はナンパ失敗記ではありません。仕事の話をサカナに、I.W.ハーパー(おなじくバーボン)をダブルであおっていたときのことです。隣のテーブルに陣取っていた、スーツ姿の一団の会話が、耳に飛び込んできました。
 その内容は……

「(『ガ○ダム』談義かい……!)」

 いえ、別に『ガンダ○』の話題自体が悪いとは言いません。自分もサブカル畑で飯を食う人間の一人ですし。しかし! こんな小洒落たバーでするもんじゃないだろうと思うのですがどうか? 見れば、彼らはの顔立ちはみな初々しく、恐らく新入社員か、長くても入社一年目だろうなと、うなずき合う私と悠煌氏でした。……つうか、彼らを『若いなあ』と言えるということは、自分自身がめっきり老け込んだのだという事実の証左でしょう。ああ、たそがれる26歳の秋。……つうか、どんな酒よりもインパクトが強いと思ってしまったあたりが自分の業なのかも知れませぬ。嗚呼。

 店内のBGMはますますテンポアップし、やかましいぐらいになってきました。……と、ついにはグラスを片手にステップを踏み出す客まで出現! ラテン仕込みのノリノリステップかぁ!? ……と思いきや、さにあらじ。ノリノリのようでいて、たどたどしい。一生懸命譜面を追っている感じがする。そして、どことなく単調なこの動き……そう、巷で流行っているダンスゲームの動きでした。ノリノリよりも、むしろ萎え萎えさんです。いたたまれなくなった私たちは、M氏の仲介で同席していた女性客との会話が途切れたのをきっかけに、『だよね?』のバーを出たのでした。

 今度は、ナンパ目的など持たずに一人で赴き、フツーにバーボンで葉巻をくゆらせたいと思う私でした。ああ、似合わないキザだこと(笑)。



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