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ジンの想い出

 『お父さん、何か一杯作りますか?』
 『せやな。ジンでなんか作ってくれや』

 居間でくつろいでいる時に、よく交わされる、父との会話です。
私のカクテル好きは父親譲りで、父もよく珍しい酒を買ってきます。
(近所にディスカウントストアがあるせいもあります)
そのため、現在我が家には、ウイスキー、ブランデーを始め、ウォッカ、テキーラ、ラム…様々な酒があります。(リキュールの類はもっとあります)しかし、ジンの減りが一番激しいです。

 父は還暦近くなってから、再びカクテルに凝りだしました。私の趣味となったのもその影響です。しかし元々は、数年前糖尿病を患って以来、酒の量を減らすためだったそうです。様々な酒を楽しそうに買ってきては、私が珍しい物を作り、品評する…そんな日々です。しかしベースは、圧倒的にジンが多いのです。

 ある日、私は父に尋ねました。どうしてそんなにジンが好きなのか?と。
 父は言いました。若い頃、バー(トリス・バー)で呑んだ、想い出の酒だからだそうです。
 もっと安物のジンを、気取って呑んでいたそうです。
 私には想像するより他ありませんが、ちょっといい、そしてちょっと背伸びをしたような…なんだか今の自分のような光景が頭をよぎりました。違いがあるとするならば、私はウイスキー党だと言うことですか。

「ジンでなんか作ってくれや」
「うーん…」

 考えて、なにも珍しい物が浮かばないときは、私はマティーニを作ります。
 手軽にロックで。自分はドライジン2に、ベルモット1。父はドライジン3に、ベルモット1。それぞれにオレンジビターをピッピッと入れて、カラカラと混ぜる。気取る必要はないわけですから、マドラーの代わりに箸でもOK。そこにスタッフド・オリーブを一つずつ、ぽちゃ、ぽちゃ…。で、できあがり。実に簡単。

「うん!マティーニは最高や。やっぱり、シンプル・イズ・ベストやな!」
 満足げに父は言います。

 その意見には、私も、口の中でオリーブをもぐもぐやりながら賛成するのでした。


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